「安(かろう)心(配だな)の日本製品」

今朝(2021.12.20)の新聞で、中国の高級車、ドローン、半導体、人工知能、気が付けば「技術でも中国製」というのがあった。

まー、技術者であればとっくの昔に知っていた事だろうし、何を今更記事に?と思う。
出遅れた日本企業は「安心の日本製」を表に出して家電を売っているが本当に「安心」できるだろうか?

日本の企業は平成30年間、従業員の給料を据え置いて、製品の値上げをしなかった。
徹底的にコストカットしたのだろう。
耐久性など2の次で、保証期間の1年持てば後は知らんぷりするのだから、高級素材など開発する必要もない。日本が世界に誇ってきた、最高級素材=人材など使う余地などあるはずがない。プリンター本体、髭剃り本体は0円、インクと替え刃で商売する。本体はちゃちいから毎年買い直さなくてはならない。ゴミを売っているようなものだ。

実は、この夏、冷蔵庫を買い替えた。結婚した時に購入したものだから、25年以上使ったが流石にガタが来た。子供も巣立ってダウンサイジングで「安心の日本製」を購入した。次のも長々使おうと言ったら、店員は25年は無理です。寿命は6-8年ですと言われた。

確かに使い始めると、中のプラスティックはペコペコで、乱暴に使う子供がいたら6-8年どころか4-6年も持たないだろう。

昔は中国製は「安かろう悪かろう」であった。
今は日本製の方が
「悪かろう。だって安いんだから文句言うな」
「給料の上がらない社員が買えなくては困るだろう」
(かろう)(配だな)の日本製品」だ。

ドイツなどの家電は、値段表示に加え、平均耐用年数を表示するのが義務化されているとか聞いた事がある。高くても長く使いたいという利用者の希望に応えている。

壊れないものを作れば、買い替え需要は減る。壊れないものは高価にする。
高価にすると買ってもらえないから安く、すぐに買い替えてもらえるよう製品寿命を下げる。

日本の企業の取り組みは、自殺行為だと思う。生産性を自ら下げている。

冷蔵庫の中には、オゾン層を壊さないで、温暖化に寄与しにくい冷媒を入れる必要がある。ノーベル賞をもらった真鍋先生は、CO2や冷媒の大気循環をコンピュータで計算した。
私が初めての冷蔵庫を購入した時には、つくばでフロン代替の研究を国家プロジェクトでやっていた。具体的にはオゾン層に悪さをせず、温暖化に寄与しにくい化合物をニューラルネットワーク法を使って物性推算、そして新規化合物を逆設計していた。

1999年の情報化学討論会、「JP31、ニューラルネットワークを用いたフロン代替物質の物性推算、および、新規化合物の逆設計」で発表している。

やることは簡単で、ハロゲン系の溶媒、冷媒、発泡剤の目標物性を入れて、探索ボタンを押すと、分子をコンピュータの中で片っ端から組み立て、ニューラルネットワーク法で物性推算して目標値に入った構造をリストアップするプログラムを作ってしまった。

網羅的な探索になる。
1999年にはこんなプログラムが動いていた。

材料設計にAIを導入する、MI/MG/MLなどが日本でも流行りはじめているが、そうした人工知能でも、日本は2周くらい、アメリカと中国に遅れている。

今朝の新聞では、最終製品は中国製だけど、中身の素材はまだまだ日本企業が頑張っているから、と気休めを書いてくれていた。
そんな気休めを信じてくれるのは、政府や役人と識者ぐらいだろう。
(逆に、だから有効な手を打てないのだろうけど。)
そもそも、素材も含め、全部中国製になってしまったら何の問題があると言うのだろうか? 素材設計にAIを使えるような人材は、日本企業にいらない(食わせられない)のだから。

20年以上前に私のやっていた、物性推算/逆設計をこのブログで見て、どう感じただろうか?

実は、こんな技術は20年も経てば陳腐化した技術で、高校生に教えるMAGICIAN-Jrで扱うような内容だ。プログラミングも含めて教えている。次のおみくじを試してみてほしい。


化学おみくじ: ***

本文はMAGICIAN-Jrのものを読んでいただきたいが、抜粋は次のようになる。
プロピレンモノマーの構造は、CH3-CH=CH2という構造になる。
プロピレンモノマー中の水素(H)を、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)に変えることができる。
そのような炭素が3個で2重結合がひとつの化合物の物性値を集めて、第7回でやったのと同じように連立方程式を掃き出し法で解いた。 

あとはおみくじと同じで、モノマーの左の部分(CH3)が何になるか(10種類)、真ん中の部分(-CH=)が何になるか(4種類)、右の部分(=CH2)が何になるか(7種類)で、分子量、沸点、密度(=分子量/分子体積)を方程式の中に入れて計算をしている。
つまり、元のデータ51種を使って方程式を作成し、10*4*7=280種類が計算できる。
つまり、229種類の化合物はデータがないが、予測することができるようになる。

このような結果が得られれば、 

  • 沸点が60℃近辺なら溶媒に使えるかもしれない。
  • 室温でガスで、重合性がなければ、エアコンや冷蔵庫の冷媒に使えるかもしれない。
  • 室温でガスで、臭素を持っていたら、消火剤に使えるかもしれない。
  • 塩素が入っていて重合性なら、難燃ポリマーになるかもしれない。

などと素材開発につながって行く。(実際には毒性やら環境評価やら色々必要になるが。)

素材開発に日本の優位性があるかどうかも、おみくじで占ってみよう。


化学系研究者用おみくじ: ***

日本の競争力を高めたいなら、プログラミングを高校生に混じって学んで、おみくじの確率を変えていくしか無いと思うのだが。
何故こんなになってしまったのか? 韓国や中国に対するプライドが許さないのか?

pirikaの業務案内でアクセスしてくるのは、外資系か外国ばかりだ。

識者は大学でリカレント教育をとか言っているけど、大学どころか、中学の連立方程式か、小学校の鶴亀算からやり直した方が良い。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です