コロナの飲み薬のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を公開していたら、アメリカの友人(CALTECH)から、抗がん剤のSotorasibもやってくれとリクエストが入った。
後から来たメールによると、この薬は研究からマーケットまでの最短記録を持っているらしい。
You may not know – Sotorasib was one of the fastest drugs from start of research to market – before Pfizer’s Paxlovid. Now Paxlovid has that record. Merck’s Molnupiravir does not count because they had done quite a bit of work on that molecule for something else, so it was not starting from scratch.
Anti-cancer medicationにある化合物のいくつかを最新のY-MB2021パラメータを使って計算してみた。計算したのは次の7化合物だ。
name | Smiles | CAS |
Sotorasib | CC(C)c1nccc(C)c1N2C(=O)N=C(N3CCN(C[C@@H]3C)C(=O)C=C)c4cc(F)c(nc24)c5c(O)cccc5F | 2252403-56-6 |
Cyclophosphamide | C1CNP(=O)(OC1)N(CCCl)CCCl | 50-18-0 |
5-fluorouracil | C1=C(C(=O)NC(=O)N1)F | 51-21-8 |
Epirubicin | CC1C(C(CC(O1)OC2CC(CC3=C2C(=C4C(=C3O)C(=O)C5=C(C4=O)C(=CC=C5)OC)O)(C(=O)CO)O)N)O | 56420-45-2 |
methotrexate | CN(CC1=CN=C2C(=N1)C(=NC(=N2)N)N)C3=CC=C(C=C3)C(=O)NC(CCC(=O)O)C(=O)O | _59-05-2 |
procarbazine | CC(C)NC(=O)C1=CC=C(C=C1)CNNC | 671-16-9 |
etoposide | CC1OCC2C(O1)C(C(C(O2)OC3C4COC(=O)C4C(C5=CC6=C(C=C35)OCO6)C7=CC(=C(C(=C7)OC)O)OC)O)O | 33419-42-0 |
dD21 | dD21vdw | dD21fg | dP21 | dH21 | dHAcid21 | dHBase21 | ED | EA | MVol18 |
18.86 | 9.54 | 15.88 | 9.18 | 7.2 | 2.07 | 6.12 | 33.6 | 37.4 | 429.909 |
17.98 | 10.35 | 14.79 | 12.68 | 7.68 | 1.17 | 7.37 | 28.2 | 8.9 | 197.67 |
18.71 | 11.63 | 13.19 | 19.4 | 13.91 | 7.99 | 11.44 | 28.2 | 27.9 | 90.336 |
20.11 | 9.83 | 17.27 | 11.03 | 13.99 | 7.49 | 11.32 | 30.1 | 37.4 | 362.248 |
20.19 | 9.76 | 17.71 | 11.68 | 15.16 | 8.64 | 10.44 | 29.9 | 43.1 | 320.464 |
18.35 | 9.56 | 15.62 | 8.91 | 9.13 | 3.42 | 7.77 | 32.2 | 27.2 | 205.453 |
19.03 | 9.83 | 16.03 | 8.39 | 10.67 | 2.23 | 9.85 | 15.4 | 37.4 | 420.063 |
[δD, δP, δH] Electron Donor, Electron Acceptorは次のようになる。
[18.86,9.18,7.2] 33.6,37.4
[17.98,12.68,7.68]28.2,8.9
[18.71,19.4,13.91]28.2,27.9
[20.11,11.03,13.99]30.1,37.4
[20.19,11.68,15.16]29.9,43.1
[18.35,8.91,9.13]32.2,27.2
[19.03,8.39,10.67]15.4,37.4
抗がん剤は、δP, δHが大きい極性化合物であることが重要だ。
この7つの化合物をハンセン空間にプロットすると次のようになる。
マウスをドラッグしながら見やすい位置に回転してみよう。
赤い球は抗がん剤のハンセン溶解度パラメータの位置を示している。
青い球は、ハンセン空間位広く散らばる88種類の通常溶媒を示している。
5-fluorouracilだけが大きく外れているのは仕方ないにしても、抗がん剤の近傍には、余り似たようなHSPの化合物は無いようだ。
ほとんど、くっつくくらいHSPが似ている化合物がある。それがどれとどれか構造だけから予測してみよう。
予測はあっただろうか?(球の上でクリックすると名前が表示される。)
構造が異なっても、溶解度パラメータが似ているなら、体の中の似たような(溶解性の)位置に溶け込むのでは無いかと考えるのが、HSPの考え方の基本だ。
コロナの飲み薬の時のように、構造を分割して部分部分のHSPに分けて考える必要があるかもしれないが、それはユーザーに任せよう。
このY-MB2021のパラメータはHSPiP ver.6に搭載される予定だ。
ver. 6は年内発売予定で開発を急いでいる。
(一部のCLIライセンスユーザーに先行評価をお願いしている。)
このバージョンでないとetoposideはとても変な計算結果になってしまう。
いっそのこと、誰か、薬の用途とSMILESの構造式を一覧にして送ってくれないかな?
コロナの飲み薬のHSPもそうだが、人間に大事な薬のHSPぐらい、どんどん公開していこうと思う。公知にして仕舞えばどこでも使える技術になる。
実際にHSPiPを利用するところが、中国だろうがインドだろうがどこでもいいから、早くいい薬を作って欲しい。(日本はどうも反応が鈍い。)そのためにどうしてもY-MB2021パラメータが必要ならちょっと考えよう。先に使えるように便宜を図るとか。
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