ドーピング薬物をアスリートが使うのはもちろん良く無い。しかし、風邪薬やハーブティーにも規制薬物は入っているので注意したくても大変だ。
薬の開発自体は、それで苦しんでいる人がいるのだから大切だし。
また、簡単にドーピング薬物というが、大まかには5つに分類される。
交感神経β受容体遮断薬 | BETA-BLOCKERS | β |
興奮剤 | STIMULANTS | S |
利尿薬 | DIURETICS | D |
ステロイド | Steroids | H |
麻(酔)薬,催眠剤 | NARCOTICS | N |
それでは、Trimetazidineはどこに分類さるのだろうか?
この薬は、2014年ごろ、興奮剤として登録されたが、その後は心臓代謝調節薬に格下げされた。現在では普通に狭心症の薬として、特にロシアでは処方箋が無くても購入できる普通の薬だが禁止薬物のままだ。
事の是非は専門家に任せるとして、ここではHansenの溶解度パラメータ(HSP)を用いて薬効を考えてみよう。似たHSPの化合物は似たHSPの器官に溶解するが使えるかどうかを見てみる。
まず、「類似薬選定のための薬剤分類 」と言うPDFをダウンロードして、Trimetazidineと似た薬を集める。
SMILESの構造式があれば、HSPiPのY-MB機能を使って様々な物性値を推算する事ができる。ここではY-MB(2021)を使った。
次にドーピング規制薬物の一覧をネットからダウンロードして、そのSmilesの構造式を収集する。そして同じようにY-MBで計算をしておく。
SOM(自己組織化マップ)を使ってHSPの多次元ベクトルを2次元に落とし込んで、Trimetazidine(TMZD)の近傍にどんな化合物がいるか調べる。
まず、データを読み込んで、Stratボタンを押す。
動きが止まってきたらStopボタンを押す。
名称で見ると煩雑なのでラベル表示切り替える。
乱数を使っているので全く同じグラフになることは無いが、大まかな相対位置はキープされるだろう。
ステロイド(H)、興奮剤(S)、β受容体遮断薬(β)は比較的大きな地続きの領域になる。
TMZDはステロイド(H)かβ受容体遮断薬(β)に近そうとも言えるが、あまり判然としない。
それでは主成分分析(PCA)を使ってHSP,DN,AN,MVolを3次元に縮退させて見てみよう。
交感神経β受容体遮断薬 | BETA-BLOCKERS | β | cyan |
興奮剤 | STIMULANTS | S | blue |
利尿薬 | DIURETICS | D | green |
ステロイド | Steroids | H | orange |
麻(酔)薬,催眠剤 | NARCOTICS | N | yellow |
TMZDはプロットの中心あたりで、他の化合物に埋もれている。拡大して見ると、交感神経β受容体遮断薬(Cyan)と興奮剤(Blue)のそばに位置する。
元々が興奮剤と分類されていた理由がわかる。
類似薬として選定した化合物(Red)とは位置が随分異なることがわかる。
アスリートは、TMZDを摂取するのはダメだけど、せめてTMZDと同じHSPの香成分を持つ花を探して、匂いを嗅いでみよう。
HSPのベクトルの距離はどう計算するのか思い出してみよう。(ブログにも書いた事がある。)TMZDから一番短いHSP距離になる化合物はどの化合物になっただろうか?
解熱剤とかを思い出しそうな構造なので、余りお勧めはできない。
この成分を持つのはどの花なのかは、こちらのページを見て探して欲しい。ドーピングで失格になったら、この花を送ろう!