MIRAI(Multiple Index Regression for AI)は説明変数がとても多い化粧品やインクの配合処方を決定するのにとても有効だ。
しかし、power関数という指数(Index)を使っているので、上に凸などの関数を表現するのは不得意だ。
例えば、昔、苦労した例としては、超臨界炭酸ガスの熱伝導度を予測したいというものだ。
熱伝導度は、密度と温度の関数になる。ScCO2の密度は温度と圧力の関数になる。この密度は別の方法で推算して与えられるとして、密度と温度から熱伝導度を予測したい。
グラフを見るとすぐわかるように、温度が32度から34.7度に変わるだけで熱伝導度は大きく変わる。
このように、臨界点で物性値が極端に変わる現象を超臨界発散という。
通常熱伝導は、液体の方が気体よりも一桁大きくなる。
分子の衝突確率を考えても当たり前だ。
ところが超臨界状態では、液体よりもさらに大きな熱伝導率を持つ。
そこで、超臨界状態でポリマーを重合すると発生した重合熱を効率よく除熱できる。
特にフッ素系のモノマーのように重合熱がとても大きくて、不均化しやすいものを重合するときには、とても重宝する。
ところが、臨界点を超えると熱伝導度は急激に低下するので、状態のコントロールが難しいので、シミュレーションが必要になる。
ところが、ニューラルネットワーク法を使っても、基本、NN法はシグモイド関数を使うので、発散現象を取り扱うのは無理だ。データを公開するので試してみると良いだろう。
データをエクセルなどにコピペしてトライして欲しい。
MIRAIのような非線形回帰式を使っても、学習後の結果を表示してみると次のようになる。
温度の違いは線が平行になる事だけしか表現できない。
今回の、Power関数をガウス関数に変えたMIRAIでは、このようなケースでも次のように表現できる。
オレンジの点は、33.5度の時のシミュレーションになる。
確かにまだ問題はある。ガウス型なので左右対象になるだとか、ベースラインが右肩上がりにならないとか。
しかし、多重化してあげればそのような問題にも容易に対応可能だ。
工場での運転をMIで解析するときに、温度や圧力のデータは測定可能で入手できる。
その時の熱伝導度を予測した時に、それが不均化の尺度になり、ポリマーの物性値が大きく変わることが理解できることにつながる可能性がある。
数学者が作った、Pythonのツールを使うだけで用が済んでしまっている研究はそれはそれでHappyだろう。
しかし、毒性なども,分子体積に対して下に凸になったりする。
それを表現できるツールを開発しないと薬学系のMIにたどり着けない。
ハンセンの溶解度パラメータなども、基質と溶媒のHSPが近いところで急激に物性が変わる。例えば接着のピール強度はあるところですごく高くなる。
こうした現象が扱えるように20年前に開発したソフトを手直しして、MIRAIのファミリーに加えたという話だ。
MIRAIの利用者にはもう少し細かいところを詰めて順次公開していこう。
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