東京大学とAGCは2022年8月12日、立方体型分子であるキュバン(Cubane)の8個全ての頂点に当たる炭素原子にフッ素原子が結合した「全フッ素化キュバン」を合成するとともに、その内部に電子を閉じこめた状態の観測に成功したと発表した。
(世界初というが、こちらの論文との整合性はどうなのだろうか? 箱型分子ペルフルオロキュバンを用いた新しい電荷移動錯体の合成とその電子物性評価 秋山みどりら)
すごいねー。
東大の先生もAGCの方もよく知っている人なので感慨もひとしおだ。
それに敬意を表して、CNDO/2の分子軌道を計算してみた。
全フッ素化キュバンのSMILESの構造式は次の様になる。
FC12C3(F)C4(F)C1(F)C5(F)C2(F)C3(F)C45F
pirikaのWebアプリで3次元構造を作ってCNDO/2計算するのは簡単なので自分でもやってみよう。
Smiles構造式からCNDO/2計算用の3次元構造
CNDO/2 計算実行
結果は次の様になる。(このCNDO/2の計算は、計算結果を見ているのでは無い。ブラウザーにCNDO/2のプログラムと分子構造が送られて、ブラウザー上で計算されたものを見ている。計算機やネットが早くなると、簡単にこんなことができるようになるので、色々インスパイアーされることが増えて楽しい。)
マウスでドラッグすると回転、shiftキーとドラッグで拡大・縮小、Optionキーとドラッグで平行移動する事ができる。
このプログラムでは、p軌道を赤と青い球で表している。
分子を回転してみると分かると思うが、各頂点の炭素の上のp軌道のうち、青い球が全部立方体の内側を向いている。
そこで、立方体の中心では釣り合うので、そこに電子が閉じ込められるという事らしい。
まるで核融合のレーザー・プラズマ封じ込めみたいでカッコいいな。
そういえば、常温核融合も、Pdの中に吸蔵された水素が融合するとかだったけど、その時のLUMOはどうだったのだろう?
流石に、CNDO/2では計算できないが。。。
気になるのは、フッ素と炭素の間のLUMOが8つ全部、反結合性(赤と青の色が入れ替わっている)で、炭素間の電荷は+なので、パーオキサイドのような配列なことか。安定性は大丈夫なのだろうか?
「全フッ素化キュバンのLUMOが電子を閉じ込めた!」への3件のフィードバック