分離技術会、講習会2007年 Antoine定数の高度利用

2023.5.9(2007.9.19オリジナル発表)

情報化学+教育 > 私の化学 > 分離技術会ー講習会2007年9月19日

Antoine定数の高度利用

パワポ発表資料

Antoine定数の理論については、pirikaのページの中で詳しく解説している。

古いパラメータであり最近のプロセス・シミュレータでは使わない方向へ行っているように見える。
蒸気圧式としては、定数を5つ使ったりして、より精度が高くなっている。

問題は、Antoine定数にしても、5定数の蒸気圧式でも、定数は化合物特有の値となってしまう点だ。
新しい化合物に対しては新しい定数を求めなくてはならない。

すると、まだ存在しない化合物をスクリーニングする時に困ったことになる。
例えば、地熱発電用に新しい不燃性の化合物を設計したいとする。
40℃、60℃、80℃、100℃、120℃の蒸気圧が必要といわれる。
コンピュータの中でハロゲン原子の位置や結合のタイプを変えて、200万化合物を発生させたことがある。

では、まだ存在しない未知の物性の化合物のAntoine定数をどうやって手に入れるか?が問題だ。別に5定数の蒸気圧式のパラメータが推算できるならそれでも良い。

沸点推算とか物性値の推算はさまざまなものがあり、pirikaでもたくさん取り扱っている
例えば、臨界定数を推算して蒸気圧を推算する方法がある。

臨界定数や沸点だって分子固有のパラメータで、これらは推算できるが、何故Antoine定数は推算できないのだろうか?
(最悪、臨界定数と沸点を推算して、Riedel式で蒸気圧を推算する。その結果をpirikaのWebアプリに放り込んでAntoine定数を算出することはできる。)

それは、Antoine定数はA, B, Cの3つの組み合わせで意味を持つのであって、しかも同じ程度の精度で蒸気圧をフィティングするA,B,Cの組み合わせは多数存在するからだ。

そこで、そのAntoine定数を誰がどう決定したかによって値が大きく変わってしまう。
その式を使う分には問題ない。計算したい温度を入れてあげれば、どのA,B,Cの組み合わせでもほぼ同じ蒸気圧になる。

従って、化学工学ハンドブックなどに載っているAntoine定数を全部集めて、機械学習したところで、推算精度は上がらない。
同じ化合物であっても複数の全く異なるA,B,Cがあるのだから。

そこで、Antoine定数の本来の意味を考慮して、初期値を工夫すると解の安定性が非常に高まると言うのがこの講習会での大事な点の一番目。

そうして安定的に求めたAntoine定数は分子構造から推算することができると言うのが大事な二番目。

この3パラメータは、臨界定数(Tc, Pc, Vc)のように他の物性値を推算するのに使えると言うのが大事な三番目。

個別の化合物の蒸気圧フィティングの精度を最大限に高くすると言うプロセス・シミュレータ側からの要請で、化合物の構造からは推算できない単なるフィティングパラメータと、pirikaのものとではコンセプトが全く異なる。
pirikaの提供しているものは、自信を持って精度が低い。
その代わり、未知のものを探索する時には威力を発揮する。

残念ながら、そのようなニーズはほとんど無いらしく、問い合わせは皆無だった。
こうして作ったAntoine定数推算式は、現在のところ唯一HSPiPと言うソフトウエアーに搭載されている。
SMILESの分子構造式からAntoine定数を推算する。他にもpirikaで開発した物性推算式の最新版が搭載されているので、必要であれば購入してほしい


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