計算機化学討論会2000

2023.4.21改訂(2020.10.22)

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退職3年縛り終了。ガラスやフッ素も。

ニューラルネットワーク法によるガラス物性の推算とその応用

1995年1月から1999年6月まで筑波の物質研に出向している間に、ニューラルネットワーク(NN)法による物性推算や遺伝的アルゴリズム(GA)法による逆設計を行いました。

その際に、物質研の先生を通じて、酸化物ガラスのデータを頂き、NN法、GA法で解析を行い計算機化学討論会で発表しました。

この方法は今で言う、マテリアル ・ゲノムで多用されている方法と同じです。

大きな違いは、データ量とコンピュータの能力でしょうか。
ビックデータが無いと、NN法は予測性能が非常に下がります。
しかし、ガラスの物性値は多いもので5000程度しかありません。
また、当時のコンピュータの速度、メモリー、HD容量から、3層以上のNN法は実質無理がありました。

そこで、私がよく使った方法は、再構築学習NN法と言うものです。
学習を繰り返す際に何回かに1度、結合荷重行列に忘却効果を導入します。
すると弱い結合荷重はさらに弱く、強い結合荷重はさらに強くなります。

NN法の学習結果は中身がブラックボックスになりがちです。
ところが、再構築学習NN法を使うと、情報の流れがはっきり見えてきます。
例えば、混合アルカリ効果と言うものがあり、ナトリウムとカリウムを混合した場合に、物性値が上に凸になる現象があります。
得られたニューラルネットワークの結合荷重のうち、NaとKのものだけ、値が大きなものだけを抜き出すと下図のようになります。

混合アルカリ効果

中間層のニューロンと入力層のニューロンの結合の符号はマイナスですが、中間層と出力層の結合はプラスが3つ、マイナスが2つになります。これがNa/Kの比率で物性値が非線型になると解釈する事ができます。

本来の変数は、入力ニューロン数*中間ニューロン数+中間ニューロン数だけあります。

酸化物が20種類、中間ニューロンが10個であれば、210個の結合荷重を決めなくてはなりません。
ところが、再構築学習法で80%の結合が消えてしまえば、40個程度の結合荷重で物性を予測できることになります。

それはすなわち、少ないデータでも予測式を作ることが可能であることに通じます。
少ないデータ。
過学習をさせない。
学習データの無い酸化物のデータを補完する。

今でも大事なものは変わりません。

発表スライドPDF

学会発表の時に使っていたJavaアプレットの復刻版を作りました。

このプログラムに、KとNaの量を変化させて予測値を得ると、混合アルカリ効果の予測値が得られるということです。

逆にほしいガラスの物性値が決まっていて、それを満足する組成を得るには逆設計プログラムを使います。

他の物性値を同じにして軽量化を図りたい時にこうしたプログラムを作り、コンピュータに組成の候補を作ってもらいます。


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