情報化学討論会99

2023.4.21改訂(2020.10.22)

ニューラルネットワークを用いたフロン代替物質の物性推算、および、新規化合物の逆設計

材料ゲノム、マテリアルズ・インフォマティクス を使って材料設計するのはすごく難しい、と思われがちだが、そんなに難しいことではない。習うより慣れろで、まずやってみよう。

私がこれまで30年間やって来た、「コンピュータによる材料開発」のコンセプトは次のようなものだ。
1999年の情報化学討論会、「JP31、ニューラルネットワークを用いたフロン代替物質の物性推算、および、新規化合物の逆設計」というタイトルで発表した内容を元に、「コンピュータによる材料開発」の概念を紹介しておこう。

Flon MI

フロンは分子中にフッ素や塩素を含む、CFC(Chloro Fluoro Carbon)の総称だ。
引火性もなく、生体毒性も低いので、冷媒や発泡剤、溶剤に使われて来た。

ところが分子中に塩素を含むために、オゾン層の破壊をもたらした。
そこで、オゾン層を壊さず、地球温暖化係数の低いフロン代替を開発するという国家プロジェクトに参加していた。

分子の構造が決まれば、その物性値は決まる。冷媒や発泡剤、溶剤に求められる物性値は決まっている。

それならば、
コンピュータの中で片っ端から分子を組み立てて、その物性値を計算する。
そして物性値の組が目標に入っていたら候補として取り出す。

そのようなシステムを構築して学会で発表した。

当時のコンピュータでは、炭素の数が7以上の物まで計算すると、真新しい400MByteのハードディスクがパンクしたのが今では懐かしい。

様々なフッ素や塩素を含む化合物の物性情報を集めてデータベースにした。
そして物性推算式を作成する。

「新たに合成された化合物の物性値を予測する」
「推算式を作り直す」

を繰り返し、予測性能を上げていく。

推算式には、当時流行り始めたニューラルネットワーク法対応状態原理のハイブリッド法を用いた。

分子の情報には、原子団の数から始まって、量子化学計算の結果、化学工学的定数、分析値、何でも使った。

その後20年間やって来たことは、結局同じことで、「物性推算と逆設計を高速に繰り返す」という事だった。

分子のように原子団に分けられないガラスや触媒みたいなものは、遺伝的アルゴリズを用いて組成設計をする。
データ数が少なくても過学習しないニューラル・ネットワーク法を考える。

様々な情報化学のツールを導入する。

20年経ってみると、再びニューラルネットワーク法の時代が来たが、化学の領域のビッグデータは限られるのは昔と同じだ。

限られたデータで「物性推算と逆設計を高速に繰り返す」MAGICIANへの要請は高いままだ。

幸い、コンピュータは当時より100倍以上早くなったし、メモリー、ハードディスク、ネットワーク速度も飛躍的に向上した。

プログラムの作成もとても容易になりました。

同じことをしようとした時には、とてもいい時代になった。古いやり方をきっちり押さえて、MAGICIAN用の杖を手に入れよう。 

発表PDFダウンロード

昔、マックのソフトにAfter Darkというものがあった。(コンピュータの画面が焼き付かないように、暗くして熱帯魚などを泳がす)

20年前に作ったアニメがいまだに動くのはすごいなー。

本来は化合物の大気寿命を情報化学的に予測する。
そうやって、MIで作った候補化合物の環境評価をコンピュータ上で占います。

うーん。大気寿命の短いものは燃えてしまう。。。


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