ダイポールモーメントの計算

2011.6.28

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ダイポールモーメント(DP)の値が化学工学上重要になるケースはあまり多くないだろう。
マイクロウエーブを使った合成などの時に、DPの値が必要になるかもしれない。また、Hansenの溶解度パラメータの分極項を決定するにはDPの実験値が必要になる。

このDPの実験値はあまり多くないし、そのデータが増えているようにも見えない。

そこで、最近ではDPは分子軌道計算や電荷計算で求めてしまうことが多いようだ。
しかし実測のDPと計算で出す、真空中の1分子の計算から出すDPは似ているようで大きく異なっている。

どのように注意しなくてはならないか説明しておこう。

データベースにある1852化合物の実測のDPに対して、MOPACを使って構造を最適化し、ダイポールモーメントの計算値を得て、プロットしたのが下の図だ。お世辞にも精度が高いとは言えない。

DP1


だから、分子軌道法の計算値は使えないと言ってしまうのは簡単であるが、科学的ではない。
どんなものがどうだめなのか見ておこう。
MOPACで分子を計算すると、その化合物がどのPoint Groupに所属するのかが計算される。これは自分の最も不得意な群論の問題になる。

C1グループだけを抜き出すと次のようになる。

DP1

ここで直線から外れるものは、次のような化合物になる。

DP1

C2グループでは次のようになる。

DP1


官能基が両脇にあるような、対称性の化合物で合わない。計算上は対象なのでDPは打ち消しあうのだが、実際の分子では対象が崩れているのだろうか。

DP1


C2v, C3vの化合物は計算値は比較的よく合う。

DP1

これらの化合物で合わない。

DP1



Csグループ

DP1

これらの化合物で合わない。

DP1


Ci, D*h, D2, D2d, D2h, D3, D3d, D3h, D4h, D6h, Oh, Td,C3, C2h, C3h, C*vでは使えないと思ったほうが良い。

DP1


以上のように、2官能以上の物、その官能基が対称性を持つものの計算値は信用しない方が良い。そして分子が大きく、伸びきった安定構造以外の構造を取れるものも値がおかしくなる。こうしたもの以外は、そこそこ計算値でも使えるのではないだろうか?

QEQ(電荷平衡法)を使ってもダイポールモーメントは計算できる。

DP1

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