WikiPediaにあるHansen solubility Parameters の記述

2022.9.6改訂(2009.8.13)

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記載は2009年の古いもののままです。

WikiPediaにあるHansen solubility Parameter の記述を先生の了解のもと日本語に翻訳しました。

Hansen Solubility Parameters on WikiPedia

Wikiの記事を翻訳しようとしたのだけど、どうやってもうまく行かない。

アカウントを作り、色々試したのだが。他の記事を翻訳する事はないだろうから、ハンセンの溶解度パラメータの部分を全文こちらに置く事にする。

ハンセン溶解度パラメーター

ハンセンの溶解度パラメーター(HSP)は1つの物質が他の物質に溶解して溶液になるかどうかを予測する手段としてチャールズ・ハンセンによって開発された[1]。

HSPは似た物は似た物を溶かすというアイデアに基づいている。
ここでいう“似ている”というのは、一つの分子が自分自身と相互作用するのと同じように他の分子と相互作用している状態と定義される。
具体的にいえば、各々の分子には3つのハンセン・パラメーターが与えられており、普通はその単位はMPa^0.5 である。

  • δd 分子間の分散力に由来するエネルギー
  • δp 分子間の極性力に由来するエネルギー
  • δh 分子間の水素結合力に由来するエネルギー

これらの3つのパラメーターは、ハンセンの空間として知られている3次元座標の一点として取り扱われる。2つの分子がこの3次元空間上で近ければ近いほどお互いは溶解しやすい。

(通常はポリマーと溶媒であるが)2つの分子のパラメーターが溶解の射程内かどうかを決定する為に、相互作用半径(R0)と呼ばれる値が溶質の方に与えられる。

このR0値はハンセン空間の球の半径を定め、その球の中心は3つのHSPの組になる。ハンセン空間上のHSP間の距離(Ra)を計算するには次式を使う。

この値(Ra)と相互作用半径(R0)を組み合わせると、系の相対的エネルギー差(RED)が得られる。

RED= Ra / R0

  • RED<1 分子は似ていて、溶解し合う
  • RED=1 部分溶解する。
  • RED>0 溶解しない

用例

ハンセンの溶解度パラメーター(HSP)はペンキやコーティングなどの産業で使われてきた。そうした産業では溶媒とポリマーの相互作用を理解して制御することは不可欠である。長年に渡りHSPは多くの実用分野で使われるようになってきた。例えば、

  • ポリマーの環境応力破壊
  • カーボンブラックなどの顔料の制御された分散
  • カーボンナノチューブ、バッキーボール(C60)や量子ドット(quantum dots)の溶解性や分散性の性質を理解する。
  • ポリマーの接着
  • 手袋の安全性、食品包装のバリアー性能、皮膚への浸透など、溶媒や化学品のプラスティックへの浸透現象の理解
  • RED値に基づいた表面濃度の理解を通して、溶媒のポリマーに対する拡散
  • DNAとの相互作用を通して細胞毒性[2]
  • 人工の鼻(ポリマーによって、どこが試験臭の溶解性に応答しているか)[3]
  • 安全/安価/早い、混合溶媒。望ましくない(危険であったり高価な)溶媒を、望ましい(安全で安い)溶媒に置き換えることができる。その際には元の溶媒のHSPと同等な混合溶媒のHSPを用いるという合理的な方法が使える。

理論的な正当化

HSPは時に、“単なる相関”として片付けられてしまうが、HSPは蒸発熱に基づいた深遠な熱力学的な正当性を持っている。

HSPはしばしば、Flory-HugginsのChiパラメーター(変換は非常に単純な式ですむ)と互換して使うことができた。

そしてHSP値は多くの場合、Flory-Hugginsのパラメーターより、さらに信頼性が高く、広く知られている。

そこで例えば、活量係数の計算などに広く実用化されている。

Raを計算する分散項の前の4という係数は、長円体(ラグビーボール状)を球に見せかける為のごまかしではないかとあざ笑われたが、(Ref1の2章、[4]参照)この係数は Prigogine と Pattersonによる抜本的分析からでてきた。

HSPが広い範囲にわたって応用できる事が見いだされたという事実は、HSPの根拠が熱力学であることによる正当性を示している。

もちろんHSPの効果は速度論の効果によって無効になりうる。
(メタノールのような小さな分子は”異常な結果”を与えうる)
そこで速度論がより重要になる分野では注意しなければならない。
HSPを分子動力学のテクニックを用いて計算する事が可能である事が示された。[5]
しかし、現在の所、分極と水素結合のパラメーターは、ハンセンの値と互換性があると言えるほどには信頼性のある分割にはなっていない。

限界

次の限界がチャールズ・ハンセンによっても認知されていた。

  • HSPはとても温度依存性のあるパラメーターである。
  • パラメーターは概算値である。分子間結合はHSPのパラメーターが示唆するよりはずっとわずかである。分子の形状にも依存する。また、誘起ダイポールモーメント、金属の相互作用、静電的な相互作用などの他の結合力にも依存する。
  • 限られた時間の中で2つの分子が実際に溶解するかは、分子の大きさも重要な役割を果たす。
  • パラメーターを測定するのは難しい。
  • Abbott と Hansen [6]の最近の研究で上記問題のいくつかは解決の糸口が見つかっている。

新機能

  • 温度を変えたときのHSPが計算できるようになった。
  • 分子の大きさの効果(速度論と熱力学)が明確にされた。
  • 新しいクロマトグラフィーのやり方でHSPを直接測定できるようになった。
  • 化学品やポリマーの膨大なデータセットが利用できるようになった。
  • ポリマー、インク、量子ドットなどのHSPの値が”Sphere”ソフトウエアーを使って計算できるようになった。(もしくは自分のソフトウエアーに簡単に導入できるようになった)
  • そして文献 [7]にある、UNIFACの原子団からHSPを推算する、新しい Stefanis-Panayiotou法が使えるようになり、’Sphere’ソフトウエアー中でも自動化された。

これらすべての新機能は外部リンクに記述したように、e-book, ’Sphere’ソフトウエアー, データセットの中に記載されている。しかし、商業パッケージとは別物として進められている。

参考文献

  1. Hansen, Charles (2007). Hansen Solubility Parameters: A user’s handbook, Second Edition. Boca Raton, Fla: CRC Press. ISBN 9780849372483.
  2. C.M. Hansen, Polymer science applied to biological problems: Prediction of cytotoxic drug interactions with DNA, European Polymer Journal 44, 2008, 2741–2748
  3. M. Belmares, M. Blanco, W. A. Goddard III, R. B. Ross, G. Caldwell, S.-H. Chou, J. Pham, P. M. Olofson, Cristina Thomas, Hildebrand and Hansen Solubility Parameters from Molecular Dynamics with Applications to Electronic Nose Polymer Sensors, J Comput. Chem. 25: 1814–1826, 2004
  4. Patterson, D., Role of Free Volume Changes in Polymer Solution Thermodynamics, J. Polym. Sci. Part C, 16, 3379–3389, 1968
  5. http://www.wag.caltech.edu/publications/sup/pdf/587.pdf
  6. Abbott & Hansen (2008). Hansen Solubility Parameters in Practice. www.hansen-solubility.com.
  7. Prediction of Hansen Solubility Parameters with a New Group-Contribution Method, International Journal of Thermophysics, 2008, 29 (2), 568-585

初心者のためのHSP
HSPの計算方法も参照ください。

具体的にHSPiPを使ってどのようにHSPを求め利用するのか,離型剤の洗浄が初心者には一番分かりやすいと思います。

HSPiPの使い方その3:反応の副生成物を抽出除去する溶媒を探索する。
使い方が分かりづらいというユーザーにハンズ・オンで説明した。その説明の改訂版。

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