ICH勧告溶媒とハンセン溶解度パラメータ(HSP)

2022.9.24改訂(2010.2.26)

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概要

医薬品を合成する用の溶媒に関して、どんな溶媒を使うべきか、使うのが好ましくない溶媒はどんなものがあるかを定めた、ICHの勧告がある。

使うのが好ましくない、Class1とClass2の溶媒は、医薬品の中に残留しないように厳しい管理が必要とされる。

その管理にはガスクロが使われることが多い。ガスクロのリテンション・インデックスと溶媒のHSPの関係を解説する。

内容

Agilent Technologiesから Class 1 と Class 2 GCデータ を入手した。
(ICHの勧告については こちらの記事を参照)

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使うと、様々な溶媒がポリマー中にどのくらい溶解しやすいかを知ることができる。

そこでHSPを使うと、ターゲットの化学物質が、HPLCやガスクロの固定相へどのくらい溶解しやすいか?を見積もることができる。

例えばHPLCの解析は次のように説明されている

ガスクロのリテンション・インデックス(GCRI)も同じように、固定相への溶解度と蒸発のしやすさで、保持時間が決まってくると考えている。

このGCRIの推算はHSPiPに実装されている。カラムを選択すると(DB-1とDB-XLBしかないが)カラムのHSPが自動で入力される。

サンプルのSmiles構造式を入力して計算ボタンを押すと、サンプルのHSP値、沸点、分子体積が計算される。(沸点はマニュアルでも入れることができる)

そしてGCRIが計算される。(GUIはバージョンによって異なる)

HSPiPは化合物のSmilesの構造式から、HSPの値と沸点などを推算する機能が搭載されている。
この機能を使ってICH勧告のクラス1,クラス2の溶媒のGCRIを検証してみた。

この結果はver.3を使ったものだ。最新のHSPiPを使って実際に計算してみよう。

データをエクセルなどにコピペしておく。

テーブル
Hcode No Name BP RT
456 1 Methanol 337.85 1.749
239 2 1,1-Dichloroethylene 304.71 2.722
10 3 Acetonitrile 354.75 3.21
524 4 Methylene chloride 312.9 3.571
1228 5 trans-1,2-dichloroethylene 320.85 4.027
417 6 hexane 341.88 4.548
224 7 cis-1,2-dichloroethylene 333.65 6.11
531 8 Nitrobenzene 483.95 6.11
156 9 trichloromethane 334.33 6.881
122 10 carbon tetrachloride 349.79 7.607
181 11 Cyclohexane 353.87 7.607
647 12 1,1,1-trichloroethane 347.233 7.607
52 13 benzene 353.24 8.575
291 14 1,2-dimethoxyethane 357.75 8.575
367 15 1,2-dichloroethane 356.594 8.968
649 16 trichloroethylene 360.1 11.574
477 17 methyl cyclohexane 374.084 12.619
306 18 1,4-Dioxane 374.47 13.867
598 19 Pyridine 388.41 20.145
637 20 Toluene 383.78 20.82
474 21 2-Hexanone 400.7 22.676
148 22 chlorobenzene 404.87 23.488
333 23 ethylbenzene 409.35 23.684
297 24 DMF 425.15 23.814
5323 25 m-xylene 412.27 24.204
697 26 p-xylene 411.51 24.4
698 27 o-xylene 417.58 24.4
285 28 N,N-Dimethylacetamide 439.25 24.4
618 29 Tetralin 480.77 26.678

RTはデジタイザーを使ってチャートから読み取った。

結果はあまり良くない。
特に、No.8ニトロベンゼンは大きくずれる。

これは多分、ニトロメタンの間違いである。クラス1、2の中にはニトロベンゼンは無い。( Agilent Technologiesにメールを出したが、返事はまだ無い
返事を頂いた。やはりニトロメタンの間違いだそうだ。対応感謝します。)

GCシミュレーションに実験値の沸点を入れて計算し直してみた。
そうすると、かなり良くなった。(No.8はニトロメタンとして)

GCシミュレーションを使う場合は、(特に化合物の種類の多様性が高い場合は)沸点の推算精度がものを言うようである。
最後のデータ点、 No. 29 Tetralinがずれるのは、多分、ガスクロのオーブンを昇温しているのだろう。(記載は無いが、ベースラインがあがっているので)

2011.2.7

V3.1.xでの沸点の推算精度。沸点の推算精度が上がれば、GCRIの推算精度も高くなると考えられるので、GCRIもそのうちに再計算してみようと思う。

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