2022.11.24改訂(2010.11.16)
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概要
ニトリルブタジエンゴム(NBR)は主な用途として、オイルや燃料油等に接触する部品として ホース、ガスケット、オイルシール、その他に 製紙ロール、履き物、樹脂改質剤、接着剤などとして使われる。
耐油性が極めて優秀であり、加工性が良く、機械的強度も高い。耐油性も高い事から、自動車産業にも無くてはならないゴムである。
このNBRゴムの耐溶剤性のデータを入手したのでHSPを決めなおし、混合溶媒に対する耐久性を検討した。
またこのゴムに対する可塑剤を溶解度パラメータと分子の大きさから再評価した。
内容
ニトリルブタジエンゴム(NBR)は主な用途として、オイルや燃料油等に接触する部品として ホース、ガスケット、オイルシール、その他に 製紙ロール、履き物、樹脂改質剤、接着剤などとして使われる。
耐油性が極めて優秀であり、加工性が良く、機械的強度も高い。
耐油性も高い事から、自動車産業にも無くてはならないゴムである。
2011.4.22
アクリロニトリル(AN)とブタジエン(BD)をラジカル重合するとどのようなシーケンスのポリマーができるだろうか?
試しに仕込みの組成を変えて計算してみよう。この重合は温度が高すぎると、ポリマー中の2重結合が反応し、ゲル化する難しい重合だ。
Bの部分はブタジエンを示している。
ブタジエン(C=C-C=C)は重合しても、ポリマー中に poly-CC=CC- と2重結合を残してしまう。
その2重結合が反応すると、3次元架橋になりゲル化してしまう。
もし、ラジカル重合に興味が有るのであれば、こちらをお読みください。
No | dD | dP | dH | Radius | |
382 | 19.8 | 17.8 | 3.2 | 19 | Chemical Resistance of Elastomers |
31 | 18.62 | 8.78 | 4.17 | 9.62 | Hycar 1052(BF goodrich chemical co.) |
このゴムの溶解性パラメータはHSPiPのデータベースの中にもあり、上のように定められている。
dPの値や、相互作用半径が大きく異なるのは、ゴムの種類が異なる事、測定法が異なる為である。
信頼性の評価はNo.382で2、No.31で1なので、HSPは[18.62, 8.78, 4.12] 相互作用半径R0=9.62が推奨値になる。
今回、新たにデータを収集してハンセンの溶解度パラメータを決定しなおしてみた。
データのもとは、パッキンランドというホームページから取って来た。
また華揚物産のHPにも似たようなテーブルがあり、両方を合わせて解析用のデータとした。
総数200を超える溶媒に対する溶解性(膨潤性)のデータが得られたが、両者で異なる評価となった溶媒を除いて、以下のようなテーブルをまず用意する。
Hcode | Name | dD | dP | dH | Vol | Score |
552 | 1-pentanol | 15.90 | 5.90 | 13.90 | 108.60 | 0 |
1156 | oxalic acid | 17.00 | 17.00 | 26.00 | 61.50 | 0 |
1089 | 2,4,6-Trinitrophenol | 19.20 | 7.00 | 12.96 | 130.00 | 0 |
92 | butanol | 16.00 | 5.70 | 15.80 | 92.00 | 0 |
569 | propyl alcohol | 16.00 | 6.80 | 17.40 | 75.10 | 0 |
375 | 2-butoxyethanol | 16.00 | 5.10 | 12.30 | 131.80 | 0 |
236 | dichlorodifluoromethane | 14.90 | 2.00 | 0.00 | 81.30 | 0 |
7334 | linoleic acid | 16.24 | 3.05 | 5.10 | 311.16 | 0 |
3 | acetamide | 17.30 | 18.70 | 17.00 | 59.00 | 0 |
5355 | 2-methylheptane | 15.09 | 0.90 | 2.33 | 162.68 | 0 |
443 | diisopropyl ether | 15.76 | 3.20 | 3.20 | 135.80 | 0 |
326 | monoethanolamine | 16.80 | 6.80 | 20.00 | 60.30 | 0 |
368 | ethylene glycol | 17.00 | 11.00 | 26.00 | 55.90 | 0 |
– | ||||||
– | ||||||
– | ||||||
– | ||||||
450 | mesityl oxide | 16.40 | 7.20 | 5.00 | 115.20 | 1 |
454 | methacrylic acid | 15.80 | 2.80 | 12.00 | 85.30 | 1 |
53 | resorcinol | 18.60 | 8.10 | 20.30 | 95.60 | 1 |
54 | benzoic acid | 20.00 | 6.90 | 10.80 | 112.40 | 1 |
442 | Isopropyl Chloride | 15.00 | 8.00 | 2.00 | 91.70 | 1 |
683 | vinyl chloride | 16.00 | 6.50 | 2.40 | 64.70 | 1 |
71 | bromobenzene | 19.20 | 5.50 | 4.10 | 105.60 | 1 |
334 | bromoethane | 16.50 | 8.40 | 2.30 | 74.60 | 1 |
237 | 1,1-dichloroethane | 16.50 | 7.80 | 3.00 | 84.70 | 1 |
評価が○◎(A,B)のものをScore=0, △X(D,E)のものをScore=1とした。
評価がCのものは取り敢えず除外した。
(評価が△Xのものが、Score=1なのに注意。こちらが溶解、膨潤させる良溶媒である)
652 | CFC-113 | ×A |
650 | trichlorofluoromethane | ×B |
219 | dibutyl ether | △ C |
169 | m-cresol | △×C |
129 | chloroacetic acid | △×C A |
603 | octadecanoic acid | ○ D |
255 | diethyl ether | ○ E C |
615 | tetrachloroethylene | ○△ |
234 | o-dichlorobenzene | ○△ C |
120 | carbon disulfide | ○△C |
618 | 1,2,3,4-tetrahydronaphthalene | ○△D |
456 | methyl alcohol | ○C |
7032 | maleic acid | ○E |
545 | oleic acid | ◎, B, C |
325 | ethyl alcohol | ◎,C |
930 | 1-hexanol | ◎C |
376 | 2-ethoxyethanol | ◎E |
305 | dioctyl phthalate | ◎E |
データソースによって評価が異なったのは上記の溶媒である。
残りのデータ(151溶媒)を用いて、HSPiPのSphereプログラムを使い、NBRのハンセン溶解度パラメータを決定した(GAオプションを使う)。
結果は[20.8, 11.3, 3.7] 相互作用半径は13.92になった。
例外となった溶媒は21種類あった。
実際にハンセン空間で確認してみよう。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。
まず、蟻酸やメタクリル酸は例外(HSP距離が長いのに評価がX)となった。
次にHSP距離が短いのに評価が ◯ になったものは、13溶媒あった。
そのうちの10溶媒は分子体積が130以上と大きかった。
つまり、HSP的には溶解するのだけど、ポリマーの中に浸透できず評価が ◯ になったと考えられる。
これらは,可塑剤としての評価が必要であろう。
分子の大きさが130以上のものを除外して計算し直してみても、結果は[19.9, 10.6, 4.8] R=12.25と大きくは変わらなかった。
評価がCになった溶媒は、HSP距離を相互作用半径で割った値が1以下であれば溶解するはずであるが、そのうちの4つは分子体積がかなり大きい。
そこで溶解に時間がかかる、加熱しないと溶解しないなどで、中間の評価になったと考えられる。
サリチル酸は固体で加熱して液体にしての評価であろう。
このようにHSPを使うと、分子サイズの大きい10溶媒を除き、141種類の溶媒中130種類で溶解性が説明できる。
つまり90%以上の確率になる。
NBRは耐油性が高く、アルコールにも強いとされているが、ガソリンにアルコールを混合したガホールには弱い事が知られている。
豊田合成の技報の3次元SP値による膨潤極値解析技術で詳しく触れられている。
NBRのHSPとして何を使ったかは記載していないし、ガソリンとして何を使ったのかも解らないが、ガソリンーエタノールの混合HSPの極値と実験値の膨潤性の極値が一致したと結論づけている。
図中のNBRのdP値はかなり大きな値を使っているようなので、No.382の
[19.8, 17.8, 3.2]を使ったようにも見えるが、それにしてはdDの値が12程度であるのでちょっと判然としない。
今回決定したNBRのHSP [20.8, 11.3, 3.7] に対して、ガソリンの代表として2,2,4-trimethylpentane[14.1, 0, 0]とエタノールの混合HSPからの距離をプロットすると極値の位置は残念ながらずれてしまった。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
HSPは基本的には定性的な指標である。膨潤度のように定量的な現象とぴったり合うかは疑問ではある。
ガソリンーエタノールの混合液と膨潤度を新開発の定量的解析をすると、ポリマーのHSPとしては[14.5, 2.3, 5]と求まり、膨潤度とはきれいな相関が得られる。
他の溶媒の膨潤度の実データが得られればと思う。
Data of Seals Eastern, でニトリルゴムのガソリンーメタノールの膨潤挙動が記載の論文がある。
こちらの論文とは随分良く合っていると思う。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
いずれにせよ、単独ではガソリンにもアルコールにも強いNBRのゴムが、混合溶媒には弱くなる。
このような現象はフッ素系のパッキンでも知られているが、注意深く解析する必要がある。
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