超臨界CO2とハンセン溶解度パラメータ(HSP)

2022.9.16改訂(2010.7.1)

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概要

超臨界炭酸ガスに、ある温度、ある圧力で、ある化合物がどのくらい溶解するか?

この問題に対して溶解度パラメータを使って検討を行った。
通常はHSPが未知の溶質に対して、HSPが既知の溶媒への溶解度からHSPを決定するのだが、ここでは、各種の溶質のHSPを推算し、ScCO2への溶解度からScCO2のHSPを決定した。

内容

(2013.8.5 ScCO2への溶解性をQSARを用いて解析した例はこちらを参照

超臨界炭酸ガスの溶解性について興味深い論文を入手した。
“Solubility of solids and liquids in supercritical gases” by Josef Chrastil
J.Phys. Chem., 1982, 86 (15), 3016-3021

論文中では以下の化合物のScCO2への溶解度が検討されている。

Name CAS
stearic acid (37343-44-5)
oleic acid (143-19-1)
behenic acid (112-85-6)
tributyrin (60-01-5)
tripalmitin (555-44-2)
tristearin (555-43-1)
triolein (122-32-7)
trilinolein (537-40-6)
palmityl behenate (42233-11-4)
behenyl behenate (17671-27-1)
a-tocopherol (59-02-9)
cholesterol (57-88-5)
cafestol (469-83-0)

実験条件は次の温度、圧力だ。

temperature 40C, 50C, 60C, 70C, 80C

Pressure 80, 90, 100, 120, 150, 200, 250 atm.

もともとのハンセンの溶解度パラメータの使い方は、HSPが既知の溶媒を使って、HSPが未知の溶質のHSPを決めるというものだが、ここでは逆に使ってみる。

上にあげた化合物のHSPを使って、ある温度、圧力での炭酸ガスのHSPを決めようというものだ。

まず最初にやることは、HSPiPを使って、各溶質のHSPを決める。
(データベースに値があるものは、その値を使い、データベースに値がなければ、Y-MBでの推算値を使う。)

そして、下のようなテーブルを作る(これは40C, 100atmの例)。Scoreには溶解度の g/Lの値を入れる。溶解度が0.2g/L未満のものは結果があやふやになるので、今回は用いなかった。

NameScoreMvoldDdPdH
stearic acid1.02324.016.33.04.9
oleic acid0.7317.516.23.65.2
behenic acid0.43389.916.32.94.5
tributyrin4.92290.816.34.47.1
tripalmitin0.43885.716.33.13.8
tristearin0.013983.116.42.63.8
triolein0.78963.716.43.24.1
trilinolein0.52938.716.43.24.5
palmityl behenate0.44660.816.32.43.1
behenyl behenate0.204759.316.32.33.0
a-tocopherol0.2456.217.01.74.6
cholesterol0.078402.317.42.65.7
cafestol 0.06270.219.15.412.0

そして、Ver.3.1.xに搭載の Quantitative Sphere GAを使って解析を行う。
結果を纏めると下のようになった。赤い値はScCO2の密度の推算値である。

圧力依存性

圧力が上昇するとdDの値は大きくなる。特に250atmのあたりで顕著になる。
dP,dHも圧力が上昇すると大きくなる。

同じ圧力で温度が上がるとHSPは小さくなる。

このように、一度ScCO2のHSPがわかると、後は通常のHSPの考え方と同様に、HSP距離を計算すれば、その溶質の溶解度が推算できる。

線の傾きは圧力に依存しているようである。おそらくそれは、ScCO2の密度と相関があるのだろう。

他のデータも入手したので、さらに広い範囲の検討を今後行う予定だ。

2012.1.9

超臨界CO2への溶解性を、YMBを使って自分用の式を構築する方法を、MOOC抽出を考えてみよう、のページにまとめたので興味のある方は参照していただきたい。

対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの溶解度かを得る事ができる。詳しい分子の描き方はこちらを参照してください

このように、一旦モデル式が作成できれば容易に新しい溶媒を使った時の溶解度を推算できる。それをバッチで走らせて一番いいものを探すなども簡単にできてしまう。

2012.5.24

このページを参照にした論文が出ていた。

Atorvastatin Calciumを超臨界炭酸ガスを使ってナノ粒子を作る方法で、溶媒と超臨界炭酸ガスのHSPも使ってナノ粒子のサイズと形状を考察している。
Chem. Pharm. Bull. 60(4) 543–547 (2012)

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