ハンセンの3次元球、Sphereの拡張2

2022.9.11改訂(2010.7.15)

解析例トップ
 HSP基礎トップページ >

概要

年に1回行われる開発者会議で、冗談のように、球を2つ決定できないか?という話題が出て、1日で作り上げたプログラムだ。

思いのほか有用で、今まで例外とされていた溶媒の挙動がこの、Double Spheresを使うと明確に理解できたり、中ー大規模分子の溶解性が説明できるようになった。

V.3.1.Xの超目玉の機能だ。混合溶媒を設計するときにも、2つの球の中心を結ぶ線上の貧溶媒を選択したほうが、結果はよくなるはずだ。

内容

Sphereの拡張1で紹介したように、オレイン酸の溶解度ではアルコール溶媒の溶解度が異常値を取る。

オレイン酸の溶解度

ここでの計算結果は古いもののままだが、生データを提供するので最新版のHSPiPを使って自分でやってみよう。

テーブル
HcodenamedDdPdHScoreCScoreAmount
122carbon tetrachloride17.800.61107.712
156chloroform17.83.15.71136.988
534nitromethane15.818.85.100.6774
456methyl alcohol14.712.322.3024.9956
10Acetonitrile15.3186.100.8646
3671,2-dichloroethane187.44.1132.625
7Acetone15.510.47021.646
570isopropyl alcohol15.86.116.4143.175
481methyl ethyl ketone1695.1026.9675
328ethyl acetate15.85.37.2139.688
92butanol165.715.8145.765
255diethyl ether15.492.94.6142.78
148chlorobenzene194.32194.01
181cyclohexane16.800.2162.32
102butyl acetate15.83.76.3142.336
417hexane14.900029.2596
698o-xylene17.813.1177.44
532nitroethane1615.54.502.2946
404furfural18.614.9701.5015

これと同じ異常は、ステアリン酸の場合にもおこる。

そこで、この現象はカルボン酸末端がアルコールとクラスターを作り、溶解性を大きく変えている為と考察される。

つまり、クラスターを作った分子が、見かけ上、疎水的な表面しか持たなくなっている。

このような現象に対応するため、Sphereプログラムに、”Double Spheres”機能が搭載された。
この機能がどのように働くか早速見て行こう。

Double Sphere を使う場合、どこからその機能を使うのか分かりにくい。バージョンによっても名前とか位置が変わる。(Ver.5.4では一番トップの画面にある)
どこから機能が利用できるかは、定量的Shpere法のところで説明した。

開発者バージョン

ソフトウエアーで先ほどのオレイン酸のファイルを読み込み、Double Spheresを指定して、Read & Runボタンを押す。

得られた”球”は[16.9,3.1,4.0]で半径5.82の球Aと、[16.5, 0.3, 11.5]で半径7.88の球Bであった。

最新のHSPiPを使って計算すると答えは変わってくる。自分で実際にやってみよう。

ここで重要なのが、まず、Scoreが0である溶媒は、球Aにも球Bにも含まれない。
従ってRED-A,RED-Bはどちらも1以上になる必要がある。

次にScoreが1である溶媒は、球Aか球Bのどちらかに含まれていれば良い。
そこでRED-AかRED-Bのどちらかが1以下になれば良い。

もしRED-A,RED-Bの両方が1以下になった場合にはAとBの球の重なった部分にその溶媒が居る事を示している。

オレイン酸の場合はアルコールが属する球とそれ以外が属する球である事が明確に分かる。

2011.4.25

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
溶媒(小さな球)をクリックすれば溶媒の名前が現れる。

JavaScriptが動かない場合

次に、以前紹介したフッ素系のゴムの耐溶剤性をDouble Spheresを使って解析した例を紹介する。

このゴムは、疎水的なゴムのようでいて、ガソリンーエタノールの混合溶媒に強く膨潤するなど2面的な性質を持つ。

そこで、二つの球を考える事でこのゴムをより深く解析してみる。

テーブル
HcodenamedDdPdHscore
6acetic anhydride1611.710.21
7acetone15.510.471
11acetophenone18.81041
17acetylacetone16.1106.21
25acrylonitrile1612.86.81
46aniline20.15.811.20
52benzene18.4020
115gamma-butyrolactone1816.67.41
122carbon tetrachloride17.800.60
156chloroform17.83.15.70
     
     
     
429isopentyl acetate15.33.171
438isophorone17851
456methyl alcohol14.712.322.30
464methyl acetate15.57.27.61
467methyl acrylate15.36.79.41
481methyl ethyl ketone1695.11
4914-methyl-2-pentanone15.36.14.11
531nitrobenzene2010.63.10
598pyridine198.85.91
617tetrahydrofuran16.85.75.71
637toluene181.420
649trichloroethylene183.15.30
659triethyl phosphate16.711.49.21
6702,2,4-trimethylpentane iso-octane14.1000
698o-xylene17.813.10
814p-chlorotoluene19.16.22.60
9972-methyltetrahydrofuran16.954.31
1016ethylacetoacetate16.57.38.31
1037methyl acetoacetate16.48.68.91
1043propionic anhydride15.897.71
1145dimethyl maleate16.38.39.80

このデータを解析すると、最初の球Aは[15.5, 11.1, 5.9]で半径 7.61、球Bは[[15.8, 4.0, 10.3]で半径4.47であることが分かった。

dDはどちらも同じぐらいであるが、非常に広い範囲のdPに溶解する事が分かる。

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。

SOM結果

これをSOMを使って解析すると上図のようになった。

エステル類が2つの球の重なり部分にくる。
球A(赤い領域)にはケトン、アミドなどdPが大きめの溶剤がくる。
球B(青の領域)にはエステル、ケトンでもdPが小さめの溶媒がくる。

Classic Sphereを使ってオーバーオールのフッ素ゴムのHSPを求めた場合、[14.9, 6.8, 5.2]となる。

こうしたフッ素ゴムの耐溶剤性を改良しようとした時に、ゴムの中に、大きなdPに溶かされる部分と、小さなdPに溶かされる2種類の領域があると考えるか、平均的なdP=7付近であると考えるかは改良指針に大きな差が現れると考えられる。

この機能はHSPiPのV3.1.Xから使える。

解析例トップ
 HSP基礎トップページ >


Copyright pirika.com since 1999-
Mail: yamahiroXpirika.com (Xを@に置き換えてください)
メールの件名は[pirika]で始めてください

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です