振動解析結果のアニメーション

2020.12.27

PirikaでSTEAM>デジタル分子模型で見る化学結合> 8. 振動解析結果のアニメーション。

試しにこれらのページで電子書籍を作ってみました。
epub3のビュアーを持っているなら試してみるのも良いでしょう。

分子軌道計算の計算結果を読み込めば、分子中の原子の振動を見る事ができきます。
特に遷移状態での振動解析結果は化学結合のでき方を理解する上で最適です。

私が多用するのは、MOPACです。
MOPACを使った振動解析のやり方は、こちらにまとめてありますので参照いただければと思います。

振動解析を行いたい場合、反応を伴う系が多いです。
私の場合は、ラジカル重合の解析を良く行います。
例えば、酢酸ビニルというモノマーがあります。
酢酸ビニルのモノマーへラジカルがアタックして重合が始まります。

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数%程度、モノマーの頭(Head: 混み合った方)に付加することもありますが、ほとんどは尾(Tail)に反応します。
立体障害などの要因もありますが、大きな理由はCNDO/2で分子軌道を描いて見るとわかります。

モノマーの2重結合の部分は平面になります(難しい言い方だと、この炭素はSP2炭素であるといいます)。

そしてHOMOの分子軌道は、その平面に対して垂直の方向に広がります。このπ結合性軌道の係数(赤や青の球の大きさで表現しています)は尾の炭素の方が一般的に大きくなります。

そこでラジカルのSOMOは、平面の上から、もしくは、下からモノマーの尾に反応します。
すると尾のSP2炭素のπ軌道は、ラジカル炭素とσ結合を作ります。難しい言い方をすれば、「結合が4つありピラミッド構造をとるSP3炭素になった」ということです。

頭の炭素はπ結合を作っていた尾の炭素のπ軌道が無くなってしまったので、平面性のラジカルになります。このラジカルが連鎖的に進みポリマーができます。
(用語などは第6章を参照してください。)

模式図で表すと、次のような遷移状態を分子軌道法で求めることになります。

半経験的分子軌道法、MOPACでは、昔はSADDLEというキーワードを使いましたが、今では、TS(Transition State)キーワードで良好に遷移状態を探すことができます。

そして、求まったTS構造を使って、FORCEキーワードを使い振動解析を行います。
これは、上の図では山の一番高いところは2次元の山なのですぐにわかります。
しかし、遷移状態では、n個の原子がx,y,z方向に振動していているので、本当に正しい遷移状態が求まっているのかを確認する必要があります。

振動解析を行い、虚の振動が1つだけあり、その振動方向が求める反応の方向である事を確認します。

それをアニメーションで見ると、次のようになります。

反応のギブス・エネルギーの差を求めるためには遷移状態と反応の前後のエントロピー変化も必要になります。半経験的分子軌道法程度では、振動解析の結果の精度が低いので、エントロピー変化を正しく評価できません。
そこで、簡便性と高速性を活かして、まず遷移状態をMOPACで求めます。そして求まった構造に対して、非経験的分子軌道法を使って高精度に計算をすることがよく行われます。

20種類のモノマーの組み合わせの遷移状態をMOPACで計算しデータベース化しました
その遷移状態の振動を見るにはこちらからアクセスしてください。

タブレットでは無理でも、PCクラスであれば十分な計算スピードを得ることができますので、ぜひ試してみてください。
1.分子構造の調整。
2.分子集合体の分子模型作成。 ちょっと計算が重いので注意
3.各原子上の電荷を計算。 ちょっと計算が重いので注意
4.ある温度における分子(原子)の運動。
5.π結合とσ結合の違い。
6.作られる直前の化学結合の様子。
7.HOMO-LUMO遷移エネルギーと化学結合。
8.振動解析結果のアニメーション。
9.デジタル教科書の作成。
 試しにこれらのページで電子書籍を作ってみました。
 epub3のビュアーを持っているなら試してみるのも良いでしょう。
10.豊かな化学のために。
12.全フッ素化キュバンのLUMOが電子を閉じ込めた!

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