2012.6.27
HSPiPにはForce Fitという機能が搭載されています。これを使うとポリマーのHSPが既知だった場合、その値を溶媒に強制的に当てはめて評価(バグがあるようですが)してくれます。
それをもっとフレキシブルに取り扱う機能を作成してみました。
酢酸ビニルを加水分解してポリビニルアルコールを作る場合を考えてみましょう。加水分解の途中ではエステルの部分と水酸基の部分が混在します。
こうした両方が混在するポリマーのHSPは酢酸ビニルとポリビニルアルコールの中間にあって、加水分解率が進むに連れ酢酸ビニルのHSPからポリビニルアルコールのHSPに変化していきます。
その中間のポリマーを取り出して、溶解性試験(もしくは濡れ性試験)などから中間のポリマーの溶解結果(Scoreが0か1か)を得ることができます。
その結果を用いて通常のHSPiPでHSPを求めるのでは無く、強制的に酢酸ビニルのHSPとポリビニルアルコールのHSPの間に(各HSP成分のレンジを指定して)答えがあるとして中間のポリマーのHSPと相互作用半径を探索するアルゴリズムになります。
こうした機能は2種類のポリマーを混合してIPNを作った場合混合のレベルによってHSPが変わるが、答えは2種類のポリマーの間にあるだろうとか、架橋反応が進行するにつれHSPが変化するが、方向は原料から生成物の方向だろうとか利用価値が高いとおもいます。
まず最初に行うことは、中間ポリマーの溶解結果を得ることです。HSPが既知の溶媒を使った溶解性試験、濡れ性試験などを使って各溶媒のScore 0/1を決めます。
Hcode | Name | Score |
156 | Chloroform | 1 |
306 | 1,4-dioxane | 1 |
328 | ethyl acetate | 1 |
617 | THF | 1 |
417 | hexane | 0 |
52 | benzene | 0 |
524 | methylene chloride | 1 |
285 | N,N'-dimethylacetamide | 1 |
416 | hexamethyl phosphoramide(HMPA) | 1 |
7093 | triethylenediamine | 1 |
368 | ethylene glycol | 0 |
1252 | cycloheptane | 0 |
570 | isopropyl alcohol | 0 |
182 | cyclohexanol | 1 |
871 | cyclohexene | 0 |
876 | diphenylmethane | 0 |
148 | Chlorobenzene | 0 |
883 | 1,2,3-trichloropropane | 0 |
481 | MEK | 0 |
344 | ethyl formate | 1 |
381 | Ethylene Glycol Monomethyl Ether Acetate | 1 |
676 | vinyl acetate | 1 |
1096 | tetrahydrofurfuryl alcohol | 1 |
540 | octane | 0 |
このようなScoreが得られたとします。HSPiPを使って溶媒のHSPとScoreを入れ込んだテーブルを作り、保存を選択してhsdフォーマットで保存します。保存したファイルをメモ帳などで開いてみましょう。
これは表計算ソフトから必要な所をコピー/ペーストできます。
データの準備ができたらこのページのトップにあるリンクをクリックして別画面でプログラムを動作させます。
スタンド・アローン版のライセンスを持っている場合にはローカルのコンピュータで実行でき、ライセン者名の所に名前が現れるのでそのまま入力を押します。
インターネット版のライセンスをお持ちの方はプログラムに既にメールアドレスが登録されているのでメールアドレスとパスコードを入力して入力ボタンを押します。
溶媒とScore読み込み画面に移ります。
テキストエリアにスコア付きのデータをペーストします。
ラジオボタンでフォーマットの種類を選び読み込みボタンを押します。
Score=1の溶媒が赤、Score=0の溶媒が青で表示されます。
溶媒が表示されている領域はキャンバスと呼ばれる領域です。
キャンバスでマウスボタンを押し、押し続けながら動かす(ドラッグという)と溶媒群が回転します。
ウインドウのサイズを変えるとキャンバスもそれに伴ってリサイズされます。
シフトキーを押しながら水平方向にドラッグすると拡大、縮小、Altキー(まれにコマンドキー、Windowsキーにアサインされることがある)を押しながらドラッグすると移動が行えます。
iPadを使っている場合には、2本指で水平に広げたり狭めたりすると拡大、縮小される。3本指で移動になります。
読み込んだhsdフォーマットが1-6システム(Scoreが1-6の6段階)の場合にはどこまでを内側と定義するか設定する必要があります。
準備が済んだら溶質設定を行います。
ポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールのデータはHSPiPのポリマーデータベースから探します。 ポリ酢酸ビニル [17.6, 2.2, 4] R=8 ポリビニルアルコール[17.2, 13.6, 15.4] R=10.9 と見つかります。
そこで、まずポリ酢酸ビニルのデータを入れてチェックを入れると溶媒に加えポリ酢酸ビニルのSphereが緑色で表示されます。この緑色の内側の溶媒がポリ酢酸ビニルを溶解する溶媒になります。
次にポリビニルアルコールにチェックを入れます。
水色のSphereが表示されます。従って中間の加水分解生成物は緑の球と水色の球の間に来ることが予想されます。
そこでForce Fitボタンを押します。
2つの球の最小値、最大値が表示されるので、値がそのままでよければ探索ボタンを押します。
プログラムは最大値と最小値の間を0.1刻みで、赤い溶媒が球の内側、青い溶媒が球の外側にくる最小半径のSphereを求めます。
その際には例外になる溶媒も存在することがあります。(赤い溶媒なのに球の外側、青い溶媒なのに球の内側)
プログラムはトータルの例外が一番小さくなるように探索します。
この例のように範囲が膨大な場合(5114114のポイントで半径を探す)計算にはかなりの時間がかかる。
iPadをお使いの場合にはマニュアルで範囲を狭めてから計算することをおすすめします。
計算結果はテキストエリアにもアウトプットされるので、必要であれば全てをコピーし、表計算ソフトにペーストして利用するしてください。
例外が一番少なく半径の最も小さい球は別に出力されるので、チェックを入れれば黄色の球のように表示されます。回転させて見ると下のように球の中心は一致するので、黄色の球の中心は緑の球の中心、水色の球の中心にあることが判ります。
そこで、加水分解の中間ポリマーのHSPは[17.6, 6.8, 9.2] R=5.15と求まります。
溶媒の画面に戻り、チェックを外せば中間ポリマーだけが表示されます。また溶媒をクリックすればその溶媒が何であるか表示されます。
次の改良の方針は、dHdo, dHac対応とラインサーチの機能です。ラインサーチは2つのポリマーのHSPを混合比率変えながらサーチするだけなので探索ポイントは100程度に低減できます。
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