2012.4.15
HSPiPが、まだver.3.1頃の記事です。
HPLCのページはユーザーフォーラムの記事の中でもアクセスの多いページです。
ある試料が、固定相のオクタデカン(ODSカラムの場合)に溶けやすいものほど、保持時間が長くなる。
分子が大きくなると保持時間は短くなります。
そこで、保持時間は溶けやすさを示すHSP距離を分子体積で割ったものと強い相関があります。
保持時間のlogをとるとだいたい直線になります。
この直線の傾き、切片は化合物群によって異なります。
構造的に似通ったものであれば、保持時間の相対値は構造のみから推算できことになります。
Abbott先生の理論はもっと複雑でキャリアー溶媒と試料とのHSP距離も重要だと言いますが、自分はそれに対しては懐疑的です。
もともとODSカラムではキャリアーは極性溶媒で、試料はキャリアー溶媒に完全に溶解しています。
つまりScoreは全て1であるはずなので、オクタデカンへのとけ込みやすさのみで分離しているのではないかと考えています。
(HPLCの分解能を上げるには溶媒の選択が重要です。)
それが正しいかどうか、分子を描いた時にそのHPLCのピークがどう出るかを予測するアプリを作って見ました。
各酸化防止剤を順番にお絵描きします。水素はつけなくていいです。描き終わったら物性計算ボタンを押すとHPLCを計算するのに重要な物性が推算されます。計算結果はテキストエリアに表示されるのでコピーしてエクセルなどに保護しておきます。計算が終わるとラジオ・ボタンのテキストに分子式が表示されます。
順番に分子を描いて、
最後に、RT計算ボタンを押します。
1番の酸化防止剤の位置が大きくずれているのが分かります。
2、3、4、5、6の位置関係は正しく推算されていると言えるでしょう。
何故1の化合物だけずれるのかというと、水素結合の取り扱いにあります。
HSPiPでは化合物のHSPを計算する際に、OHが近い位置にある場合、補正項が適用されます。
この場合、1の化合物は隣り合う位置に3つのOH基があります。
HSPの計算ではこれらの水酸基が内部的に水素結合しdHの値を減らすと補正してしまいます。
おそらくHPLCでは、これらの水酸基は溶媒和しており、補正項を導入しない方が正しい結果を与えるのではないかと考えています。
これも、分子を描いて物性を計算し、RTを描いてみると大まかにはHPLCのチャートを再現していますが、DOPとDNOPで入れ替わっています。
2ーエチルヘキシルとn-オクチルなので、分子量は同じなので難しいとは思います。
2ーエチルヘキシル基を導入する理由は製品を液状化したいという目的の場合が多です。
n-オクチルと比べて30℃ぐらい融点が下がります。
そうした凝集エネルギーを低下させる効果がHSP値の推算値に反映されているか、さらに検討をすすめバージョンを上げていこうと思います。
それにしても、BBP(Benzyl Butyl Phthalate)が3の位置に出てくると、構造情報だけから予測する事ができるのは、かなり熟練を積んだ研究者だけでしょう。
溶解度パラメータを利用する意味がお分かりいただけると思います。
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