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MAGICIAN養成講座 > 駄文 >

2020.10.22

非常勤講師:山本博志

計算機化学、化学工学、化学情報学の共創的ネットワーク(2019.11.23)

先日、いわゆる計算機化学系の研究者(2/3)、溶解度パラメータ系の研究者(1/3)と話をする機会があった。

こうした取り組み方が全く異なる研究者への話は構成が実に難しい。
大学の授業では自分に関係ないと思うと学生はすぐに寝てしまう。
想像力を働かせれば関係ない事など全くなくてもだ。

 Multiscale Computational Hierachy for Materilas Simulation
  私は若い時には、分子軌道法に随分と時間を費やした。
とは言っても自分のオリジナルは高分子系の実験化学者である。
本格的に計算機科学の勉強をしたのは、30歳の時(1990年)にカルフォニア工科大学のGoddard教授のもとに留学してからである。

その当時、Goddard教授の提唱していたのが、Multiscale Computational Hierachy for Materilas Simulation(MSHM)と言う上の図だ。

原子が集まって分子、分子が集まって材料と左下から右上に向かう考え方だ。

(Goddard教授は「僕に高速なコンピュータを与えてくれれば、人の人生でもシミュレーションしてみせる」とおっしゃっていたけど、今だにそれはできていない。)

この、MSHMのチャートはいくつかのバージョンがある。
右上のところに計算機科学系の方には馴染みのないASOGと言うのがあるのがわかるだろうか? 
これは、Analytical Solution of Groupsと言う、日本の栃木先生がやっておられる、気液平衡の推算法である。

その推算法を使うと、Activity Coefficientsを得ることができ、Phase Diagramを書くことができる。

それができるようになると、Group AdditivitiesとQSPRを使ってViscosityやThermal Conductivityが推算できるようになる。
Activity Coefficientsを使ってSolubilityを推算する。

何故、日本の研究者にも馴染みが無いASOG法がこのチャートに入っているのか想像できるだろうか?
(気液平衡の推算なら、UNIFAC法、COSMO-RS法でしょう。普通。)

私は最初の留学で、計算機科学でメソスコピック領域を突破するのは私の実力では無理だと早々と諦めてしまった。

そして実験化学者ならではの、右上から左下へ向かう方向を模索していた。
ニューラルネットワーク法や遺伝的アルゴリズムを使って、yards,yearsの現実世界を解き、そして材料を分割して成分、成分を分割して分子の方向を目指していた。

たまたま、その頃、Goddard教授のところに2度目の留学(1997年)をする機会があった。
ASOG法の栃木先生が学会発表でアメリカに来たついでに、Goddard研に寄ってもらって講演をして頂いた。
それが、MSHMのチャートに反映されているというわけだ。

Goddard教授もその頃にはメソスコピック領域を左下からだけで突破するのは無理(もしくは効率が悪い)と気がついておられていたのかもしれない。

栃木先生とはその後、博士号(2007年)を取るのに大変お世話になった。
その時の副査には船津先生にお願いした。
計算機化学、化学工学、化学情報学の融合ができるのが私の強みであると思っている。

Goddard教授は2014-15年、韓国のKAISTで年の半分以上を過ごされていた。
CALTECHの卒業生の友人と、陣中見舞いがてら韓国へ行こうという事になった。

物見遊山で出かけたわけであるが、Goddard教授「俺は忙しいから明日の授業はお前がやれ」と無茶振りされた。
そこで取り上げたのが、大学で講義していたレジストの設計。
演繹法と帰納法の両方を使った、材料に対する多面的解析法を講義する事にした。

今回の話もこの手で行くことにした。大学の授業のコンセプト「後40年AIに仕事を奪われない為に今何を学ぶか?」をベースにする。

計算機化学系、実験系の両者が、演繹法と帰納法の両方を使った、材料に対する多面的解析法を身につけ、魔術師のように材料を仕上げていく。

遠い夢物語ではなく、アメリカ、中国、韓国ではすでに取り組まれている事。
実際に特許や会社の研究レポートを題材に、そんなやり方を自分で手を動かして納得する。

参加者には大変な時間だったと思うが、楽しい時間を過ごせたと一方的に思う。

後記

懇親会や、その後に頂いたメールなどから思ったことを徒然に書いておこう。
 

鎖国と平賀源内 日本の科学は、主にアメリカの論文・特許をもとに進歩して来た。
それはある意味確かだろう。
基礎研究タダ乗りとアメリカから揶揄されて来た。

そうした時代の方達がノーベル賞をたくさん貰うようになり、実はきちんとした基礎研究もできていたのだなと再確認できる。

吉野先生ネタで、LiBのバインダー、電解液、炭素材料、中間膜の材料設計の話をした。
大学で話しているネタではあるが、今年の資料は英語と日本語のハイブリッドになっている。
大学院の授業は基本的には英語である。
でも非常勤講師は日本語で授業しても良い。
これまで、中国人や韓国人の学生も参加していたが、彼らは日本語に堪能だったので日本語の授業でよかった。
今年は日本語が全くダメな学生が二人いた。
そこで途中資料を英語にしたら、日本人がついていかれなくなった。
そこで資料は英語と日本語のハイブリッドにした。
日本語で説明して、実際に手を動かしてもらっている間に英語で二人へ教えるという方針にした。

日本語で説明しても難しい内容を学生が理解できるようなレベルの英語で教えるのは無理があろう。
高等数学や哲学を、中学生の言語レベルで説明しなくてはならないことを考えてみてほしい。   自分がKAISTに行った時にオープンキャンパスで近所の中学・高校の学生がたくさん来ていた。
Goddard教授がそうした子供に英語で話しかけると、皆、流暢に英語で返事をしていた。
KAISTはLG城下町でその子弟が通う学校の英語レベルは高いとKAISTの先生はおっしゃっていた。
そうしたことは韓国に限らず、日本とドイツ、ロシアを除けば当たり前の光景であろう。

母国語で科学の最高峰まで学べる環境のある国は少ないのだ。
教科書が英語なので英語で学ぶしかない。

ところが最近になって状況は激変した。
論文だろうが特許であろうが、Google先生が母国語に翻訳してくれる。

外国語ができないでサイエンスの道が閉ざされていた者への道が開かれた。
そうした時代に逆行するかのような、大学授業の英語化。

大学授業の英語化率は大学評価に直結するし、少子化で学生が少なくなたっ時に海外の学生を呼ぶための重要な指標になるのもわかる。

だからと言って日本人の学生が犠牲になっていいものでもない。

世界のBest500を狙うような学校は是非頑張って英語でやって欲しい。
でも、それ以外は日本の学生が優先されるべきであろう。

留学生の側が、Google先生に英語や母国語に翻訳をお願いすれば良いだけなのだから。

そうしてでも聞く価値のある授業がなされているかが問われることは日本の大学では現状ない。

おっと、教育論をぶち上げているのではなかった。

中国や韓国は日本の特許を読んで何をしているか?だった。
中国や韓国からの留学生は日本語を覚えて母国に帰る。
そして母国から日本の特許にアクセスしてくる。

古い話だが、10年以上前の船津先生の資料に次のようなものがあった。
日本は年間33万件特許を世界に無料で公開している。
中国からは1日17,000件、韓国からは55,000件のアクセスがある。
彼らがChemo-Informaticsやっているなら、1つ特許を書けば、100個打ち返される時代がくる。
情報戦略が問われる時代になる。

彼らが何をやっているのかお見せしましょう。ということで、特許や会社の研究レポートを題材に自分で計算してもらった。
今まで中国は鎖国状態で、技術は西欧のコピペだと思われていた。
ところが、中国の知財が日本を超えた。
どうやって? 
他の分野は私にはわからないけど、素材に関しては、こんなやり方だろうというのを体感してもらった。
日本の科学がモノマネをスタートにしていても、教育がしっかりとしていて、ノーベル賞をたくさんもらえるところまで行った。

中国だって同じになるだろう。
教育が崩壊して、最先端の科学に目を塞いでいる日本の今、競争の結果はすぐに明らかになるだろう。

アメリカがマテリアル・ゲノムを国家プロジェクトでスタートしたのが2011年。すぐに同様のプロジェクトが中国でもスタートしているのだから。

江戸時代の鎖国。閉じているようで、蘭学を通じてサイエンスは広まった。
全員が蘭学者になる必要なんて無い。

平賀源内が現れてくれれば良い。    

競争、協奏、狂騒、共創? 最近のAIブームは狂騒状態だと思う。
だいたい、AIが人間にとってつまらない仕事を奪うならともかく、なんで囲碁や将棋という人間の楽しみを先に奪う? 

仕事をAIに引き継いで暇になったらやろうと思っていたのに。

残された仕事をAIと競争して奪い合う時代になるのだろうか? 
勝ち目はあるのだろうか? 
と狂騒状態になっているように思える。

でも、まー、シンギュラリティのくると言われている2049年には私はもう生きていないだろうし、そもそも、シンギュラリティは来ないと思っているので関係ない。

化学系の会社も、ブームに乗ってAI推進室やらMI推進室やらを立ち上げているが、私が見た所、もうブームの頂点は過ぎている。

ブームは誰が作っているのだろうか? 
ブームに乗じてハードを売りたいメーカーとソフトを売りたいベンダーだろうか? 

以前スパコンと分子設計がブームになったこともあった。

化学系製造業がどこも導入し終わると、次はバイオ・インフォマティクとばかりにChemDrawはBioDrawに切り替わった。
バイオ系に売りつくしたら、また今度はマテリアル?

GoogleのDeep Learningが猫の写真を認識できるようになったのが、2012年。
ビッグデータ(1000万枚のタグ付き画像データ)があれば深層学習によって機械が人間のような認知機能を獲得できる。

ビッグデータはインターネットの上にテキスト・画像が一杯ある。

それなら画像認識やGoogle翻訳みたいなものは作れる。

自然な流れだろう。
将棋や囲碁にはビッグデータはない。
でも、コンピュータ同士自己対戦させれば、勝ち負けの定義がはっきりしているのでビッグデータを作れる。

それもわかる。

そんなTensorFlowのプログラムがフリー・ウエアーで流通しだして、狂騒状態になってしまった。

人間のような認知機能を獲得させて素材開発を効率化させようと。
どこもかしこも始めたのはいいけど、すぐに気がつく。
ビッグデータもないし自己対戦もできない。
しょうがない、取り敢えず分子軌道法で計算すればどんな分子でも計算できるのでビッグデータになる。

PubChemにある分子のうち398万化合物までMO計算が終わった(理研、pubchemqcプロジェクト)。

TensorFlowとMO計算結果はもう誰にでも使える。

さあ、競争だ。何に、どう使う?

ビッグデータは工場にある製造データぐらい。
それを学習させても、毎年ある定修前後でデータの一貫性はないよ。

極端なこと言えばリアクターの洗浄前後でも一貫性はない。

収率を高めるためには毎回洗浄しようと言われても困る。。。。

段々と現実がわかってきてブームの頂点は超えてきた。

TensorFlowの開発者の書いたものを読む機会があった。
ある制限条件下(ビッグデータがあるなど)TensorFlowが有効なことは認知され、応用はこれからも進んでくるだろう。
しかし研究者を目指すのであればTensorFlowにこだわっていてはダメだ。
TensorFlowはすでに過去のものだから。

今回の私の話のポイントは次のところだ。所詮化学の素材系はビッグデータは存在しない。
超スモール・データでもアウトプットを出すために、ニューラルネットワークを協奏的に使おうというものだ。
何かを提案する時に「これこれのデータをだしてください」と実験化学者に頼むのであれば、いつ迄たっても、「計算は実験の後追いね」と言われてしまう。

1つの知りたいことに、帰納的、演繹的様々な角度から眺めると見えてくるものがある。

そして自分の持つ化学の知識を総動員して、AIと共創的な提案をしていくにはどうしたらいいかを体験してもらった。  

終わった人のユーチューブ 内館 牧子の『終わった人』という本を読んだことのある人はいるだろうか? 
仕事一筋であった主人公が定年退職した後の物語で、映画化もされた。
私も定年延長はせずに来年定年退職するので同じようなものである。

今回の私の話を「録画しておいてYouTubeで流せばよかった」とか言われたが、悪いことは言わない。
やめておいたほうが良い。
本を読むか映画をみる方がよっぽど為になるだろう。

講習会や講演会に参加して、何かを学ぶ。それ自体を「否定」している「終わった人」の話など「YouTube」で流すものではない。

それは、普通にいう学ぶというのが、多くの場合、記憶する、覚える事に直結しているからだ。

話の最後にも述べたが、聞いた話を「丸覚えするだけなら、それはAIの一番得意とすること」「人間の聴衆にそんな事は期待していない」。

大事なのは何を感じたかであって、それは各人にとって皆違うのが当たり前だ。
まとめの部分は自分で書いて資料を完成させよう。

これは10年近く大学で講義してきて、学生と議論しながら得た教訓だ。
最近の大学受験の予備校は、AIが学生の弱いところを集中的に教え、学生は時間場所に縛られずに弱点を克服できるタイプが人気だそうである。

私が教壇に立って教える、学生が集まって講義を聞く意味を考えようと議論を進める。

効率だけならAIを作った方が良いだろう。
でもそれでは考える学生は育たない。
渡り鳥は、自分の飛んだルートをビデオカメラのように全て記憶する。で
もそこに新しく橋がかかってしまうと、迷ってしまう。
記憶野ばかり刺激すると、応用力が失われ、新しいことへの対応ができなくなる。

「発見を妨げるのは、無知ではなく、既知である」という誰かの言葉を思い出す。

効率よく時間場所に縛られずに情報を得て、それを記憶するのはAIに任せて、AIにできない、何かを感じることに時間を割いて欲しいと思う。

仕事に直結するYouTubeなど見ていると、どうしても脳は記憶野を刺激してしまう。
本や映画なら、創造野を刺激する事も可能だ。

本や映画を読んだり見ても、何も感じないようなら重症だ。
子供の時に見てワクワクしたSFアニメまで戻るのも一興だ。

自分は最近大人買いで、星新一のショートショーを全部買い直して読み返してみた。

ものすごく創造性を刺激された。

人工知能、自然知能、天然知能 本ネタが続くが、郡司ぺギオ幸夫先生の書いた「天然知能」という本を読んだことのある人はいるだろうか? 

先生は共創学会を設立され、先日私も研究会に参加して来た。
AIは自分に認識できないことは無視する。
AIロボットの掃除機は、自分が吸い込めるもののみが世界の全てで、ゴミの中にダイヤの指輪が混じっていても、吸い込めるもの=ゴミなので、関知しない。

人間は本来自然知能を持っている。しかし、科学の発展とともに、自然知能が人工知能化し、認識できないものを無視するようになって来ている。
認知できないものの存在を認める天然知能の重要性を提唱している。

会社の中でも、問題に遭遇すると、「論理的に考えて解決しろ」という上司がたくさんいる。
私はひねくれ者なので、若手に相談されると「論理で説明できないから、考えるのであって、論理で説明できるなら考える必要などない」と言ってしまう。

やな奴だと自分でも思う。
科学はアリストテレスの時代の経験・実験主義から始まって、ケプラー、ニュートンの時代の観測データを分析して論理・法則を見出す研究手法が確立した。
その後、コンピュータ・シミュレーションやデータ集約型の科学的発見とか言ったって、ベースは1600年代のやり方を、効率的に高速に大規模に行なっているだけのような気がする。
しかし同じツールを使って、同じデータセットを使っても、研究者の優劣が生じる。

物理現象はその差は小さいが、化学現象はその差が大きい。
その差は天然知能の差なのかなと最近思っている。

売り上げとか、特許の数とか「測定可能量」でしか部下を評価できない人工知能化してしまった人間の上司が問題だと若手は言うが、すぐに変わるだろう。

銀行の融資担当をAIに置き換える動きが加速している。
融資は「測定可能量」でしか評価はしないのでAIで十分だ。

AIで代替可能な上司を置いていても競争には勝てないことぐらい自明だろう。
問題は上司ではなく、人事部門だろう。

AIによる採用面接、AIによる辞退率予測。人間の評価と言う大事な部分をAIに丸投げし始めている。
AIを使った採用人事を開発していたAmazonはプロジェクトを辞めた。
何故かというと、これまでの採用と採用した人物のその後の評価を人工知能に学ばせると、人工知能は男性ばかり選んでしまうから。
1周遅れで同じことをやっている。

AIは自分の認知できないものを無視する。
天然知能を持った人材はそうした会社には採用されない。
結果として、AI的なDNAを持った人が採用され、そうした人材はすぐにAIにおき代わり、全部門AIだらけが会社を回すことになる。

星新一のSF物語だと笑うことなかれ。
米証券会社大手ゴールドマン・サックスには600名の株トレーダーがいたが、AIに置き換わって今では2名しかいないと言う。

中間管理職AIができて、人間の営業の上司はAIという会社も現れた。

AIが営業までするようになるまで、時間はかからないだろう。
優秀な人間はコピーできないけど、AIはいくらでもコピーできる。
最強の盾(管理職AI)と最強の矛(営業AI)を抱き合わせて売るのは何処だろう? 

自分とは関係ない分野の話なら、囲碁で人とAI, 将棋で人とAIの対戦より、よっぽどスリリングで楽しく観戦できる。
なんて言ったって会社の存続を賭けてAI同士が真剣勝負しているのだから。

AI同士の囲碁や将棋は雲の上の話で面白くもなんともない。

ドリルの設計と紳士服のAXXi Joback先生は、Joback法の物性推算で著名な先生だ。
以前、先生の講演会で、「ドリルが欲しいのか穴が欲しいのか誤解している研究者が多い」という話をされた。
本来欲しいものが「穴」なのに、穴を開ける道具である「ドリル」を欲しがる。

今回の私の話を聞いた研究者の中にもそうした誤解をする研究者が何人かおられた。

ソフトウエアーというのは道具である。
ドリルみたいなものである。
でも、穴に関しては、ユーザーごとに全く異なるものである。

LiBのセパレータの多孔質膜を作るのにドリルは使えない。
ドリルの直径は規格化されていて自由な大きさの穴を開けられるわけではない。
穴を開ける道具は用途ごとに異なり、それはソフトウエアーでも同じだ。

普通、なるべく汎用的な道具を作ればユーザーも増えるので、販売単価を下げることができる。
特殊な道具は高価になる。
汎用的な道具は誰が使っても同じ結果しか与えないので汎用なのである。
分子軌道法のソフトは誰が計算しても、小数点以下6桁まで同じ結果を出す。

プロはパラメータを変えることによって、素人にはできない、現実解により近い答えを出せるというかもしれないが、そのうち、AIがそんな事もやってくれる時代になるだろう。

企業が差別化を図って競争力のある材料を開発するのに、汎用のソフトを求めていてどうするのかな?と思う。

欲しいものはソフトではなくソリューションのはずなのに。

今回使ったソフトは大学の授業で使っているソフトウエアーである。
授業で使う以上、汎用性のある、誰が使っても同じ結果になるソフトである。(乱数制御の部分は結果が異なるが、結論は同じ)

自分たちの研究を進めて他社と差別化するのに、安い汎用ソフトを求めるなら、結果は知れた事。
それを信じて設計するとミスリードする例もいくつか紹介したのに。

パラメータ自体をAIアシストで自分用に進化させていく、そうしたセミオーダーぐらいの値段で、オーダーメイド以上のパーフォーマンスをあげるシステムはベンダーの方も意識しなければならないのだろう。
さもないと自動販売機(vending machine)のベンダーになってしまう。

今回、話をするという事で、カミさんに紳士服のAXXiに連れて行かれた。
普段はジーンズで、スーツはカミさんとお見合いをした25年前のものをいまだに使っている。
紳士服業界おそるべし。
セミ・オーダーでも無い、吊り下げでも自分の体にぴったりのものが見つかる。

ソフトもそうなればいいのにと思う。
目指すは吊り下げスーツ・ソフトウエアーか。
ちなみに、スーツは背広と訳されることが多い。
背広の語源は、イギリスのスーツの仕立て屋がたくさん集まっていた、Savil Rowという通りの名前から来たとか。

それなら、日本のIT企業の集まる、澁谷・ビットバレーをもじって, 渋い(Bitter),Bit, 谷(Valley) BiBiVa-ソフトウエアーと名付けよう。

当然、魔法の呪文は「ビビデバビデブー」だ。呪文を唱えると、学生用バージョンのソフトがシンデレラのようにプロ版に変身する。(ウソウソ。そんなことはありません!)

くだらない駄文を書いていたら、見透かしたように、Joback先生からメールが来た。日本に行くから会おうと。

遊んでいる場合じゃ無い。

 

AIはシュレーディンガーの猫の生死を予測できるか 右上から左下に向かおうとすると実データが必要になる。
データは大いに越したことはないが、汚いデータが入ってくると、かえってそのデータを取り除くのに膨大な時間がかかる。

MIを始めようとすると、最初の関門がこのデータ集めだ。
実験系の研究者が、データを出してくれないという話をよく聞く。
「MIを使って便利になるのだから、出してよ」と言っても「実験ノート渡すから勝手に打ち込んで」と渡される。

うーん。辛い気持ちはよくわかる。
僕もそうだもの。
自分のノートは自分で読んでも何て書いてあるか読めない。
僕のノートを読んで清書してくれるAIを誰か作ってくれないかな? 
誰がそのAIに教える? 
だから、自分で読めないのだから僕は教師になれない。
誰か他の人がAIに教えてくれ。
何処でも同じような葛藤があるのを聞いて安心した。

「私は手書きなどしません。全部PCで記録します」という方もいる。
ブラインド・タッチもできない「指一本打ち打法」の私には言い返せない。

自分も20年前には打ち合わせはMacで記録していた。
でも、みんながやるようになってやめた。

ひねくれているわけでは無い。結局早く打ち込むと言う操作は、脊髄反射で頭の中には何も定着しない。

頭の中に残っていなければ「検索」もできない。

どっかで書いたなーとノートをパラパラすれば他も見るし、定着していく。

読めなければ、なんて書いてあるか考える。

考えれば、その時考えた事とは違う何かを閃くこともある。

でも、そんな奴は会社では困るので、e-Noteを導入して全部デジタル化してしまおうということになる。

データ集めは楽になるかと言ったら、そんな事はない。
製薬系はそれでもいいだろう。
もともとe-Bookは製薬系がMIをやりやすくするために作られている。
それは研究者がステップアップして会社をやめて行ってしまう組織に最適化されている。
キーパーソンが辞めても困らないように。
それ以外の分野ではそこまで進んでいない。
MIをするためには実験データはこれこれが必要で、その為にはe-Noteに記載しなくてはならない情報はこれこれだ。

ところが始めて見ると、あれが足りなかった、これが足りなかったで再フォーマット。
多種多様な化学系でMI用の汎用なフォーマットを作るのは至難の技だ。
MIをやる側はフォーマットを定義できないので、どんなデータが必要かわからず、ビッグ・データ全てを出せという。

実験をやる側は、MIが必要とするデータを理解できないので、ポイントを押さえた記述ができない。
ゴミだけが溜まっていく。
実験をやる側は自分の技術がAIに置き換わって自分は無用の長物になるのでないかという漠然とした不安を持っている。

事実、製薬系ではDNAシーケンサーとペプチド合成ロボットで、合成系の人間の需要は減少していると聞く。
銀行系や証券系だけでなくAIが人間の仕事を奪い初めているという事実がある。

その時何が起きるだろうか?

  1. 「自分はMIなんて信じない。この問題を解けたら信じてやるからやってみろ。」と無茶振りをする。例えば水への溶解度が高く、logKowが高いものを設計して見ろとか。 薬は水に解けないと経口投与できないし、logKowが高くないと腸で吸収されにくい。要求は合理的だが、MIでそれが解けるくらいなら、MIの必要性を議論などのステージには居ない。
  2. 「自分はお客様対応が忙しいので、そんな事やっている暇はない。先にお客様対応のAI作ってくれ」お客様あっての企業なので、それを言われるとグウの根も出ない。
  3. 「俺はデジタル難民だから、わかりません。言われた通りにするから、全部細かく指示して。」「まず、統計解析を理解して。」「だから、それができないからデジタル難民なんだって」
  4. 「MIが提案する通りにやったけど、うまくいかなかった。これ以上は無駄。」MIの本質は、うまくいかなかったデータを取り込んで、新しいモデルを作ってを高速で回す事。1度で打ち切るならやる必要はない。

抵抗勢力になって,MIを遅らせる、止める。

シュレーディンガーの猫というパラドックスをご存知であろうか?
放射性物質とガイガーカウンターに連動した青酸ガス発生装置に連動させる。
その装置と猫を箱に入れる。
放射性物質は1時間の間に崩壊(ガイガーカウンターが検知して猫は死ぬ)する確率が50%。
はたして、1時間後猫は生きているか死んでいるか?という思考実験だ。

シュレーディンガーさんはシュレーディンガーの波動方程式で著名な方なので量子化学をやっている人ならよくご存知であろう。

このパラドックスは、観測者が箱を開ける前に、猫の生死は決定している。
しかし、確率50%で死んでいるという解釈をすると、観測者が蓋を開けるまで、結果は確定しない。
「蓋を開けるまでは、生きている状態と死んでいる状態が重なり合った状態」になる。
不確定原理とか量子論とか私には難しくて理解できない。

MIが役に立つか、立たないか? 蓋を開けるまで確定できないのだから、蓋を開けなければ良いという戦略は正しい。

「猫は犬に追われたときに、三平方の定理を知らなくても、三角形の長辺を逃げる。」

どうしたらいいか? それが解けないからパラドックスなので、解法があるならパラドックスではない。

事実として、箱を開けようが開けまいが(MIをやろうがやるまいが)猫の生死は決定している(MIが役に立っている)例をあげれば良い。

それはすなわち、同業他社がMIを使ってどんどん良い成果を出している状況があれば良い。

でも普通、同業他社がどう解いたのかは解らない。Googleの画像認識が猫を認識できるようになってブレークしたAIブーム。
次はシュレーディンガーの猫を認識できるようになれば、MIもブレークするのだろう。

その間、何を考えて行かなくてはいけないかはMAGICIAN養成講座で一緒に考えて行こう。

来年から始める、MAGICIAN養成講座。どのように進めて行くか、とても参考になった。

Informatics(情報学)はどんな情報だって大事なんだ。

自分に足りないInformaticsが何か考えるキッカケになれば良いと勝手に思う。

MAGICIAN養成講座 > 駄文 >


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