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2005.1.14
反応速度定数Kijが判ると何種類かのモノマーを混ぜて重合した場合にA末端の次にAモノマーが来るのかBモノマーが来るのかその確率がでます。そこでさいころを振ってどんなシーケンスのポリマーができるのかシミュレーションしてみます。
具体的にどうやるのかと言うと、まず用いるモノマーの組みを選択します。そして各組み合わせの活性化エネルギーと頻度因子をニューラルネットワークを用いて推算します。すると(iラジカル末端がjモノマーに反応する)反応速度定数K[i][j]が求まります。A,B,Cという3つのモノマーを使って重合する場合、ある瞬間のポリマーの末端がB(ラジカル)だったとします。次の瞬間それがAモノマーと反応する速度は、K[2][1]*A濃度、Bモノマーと反応する速度はK[2][2]*B濃度、Cモノマーと反応する速度はK[2][3]*C濃度になります。そのどれかが起きるわけですから、Total=K[2][1]*A濃度+K[2][2]*B濃度+K[2][3]*C濃度 とすると
Aモノマーが反応する確率はK[2][1]*A濃度/Total
Bモノマーが反応する確率はK[2][2]*B濃度/Total
Cモノマーが反応する確率はK[2][3]*C濃度/Total
ですから、乱数を発生させてその値によってどのモノマーが反応するかをきめる事ができます。もしAモノマーが反応するとすると、今度はK[2][j]ではなくK[1][j]を使って同じ事を計算します。反応中はモノマーの濃度は変わらないものとします。
実際に計算してみてください。
今回リリースしたのはver2004.9.24です。ニューラルネットワークのバージョンは常に変わるのでバージョンが変わると結果も微妙に変わるかも知れません。どのバージョンかは結果に含まれるので常に保持しておいてください。例えば無水マレイン酸とスチレンを50mol%づつ60度で反応させたときのシミュレーション結果は次のようになります。
計算は10万回行います。
最初はタイトル行でバージョンが書かれます。 次にはモノマーの組みです。
次は反応性比です。
K[1][1]/K[1][1], r1(=K[1][1]/K[1][2])
r2(=K[2][2]/K[2][1]),K[2][2]/K[2][2]
次はポリマーのイメージです。
そしてポリマー中に入ったモノマーの数です。全部足せば10万になるはずなので1000で割れば%です。
そしてダイアッドの数です。これも全部足せば10万-1なので1000で割れば%です。この場合AAという結合が1.4%存在して17.46%BBという結合があるという事です。残りはA-B結合ですので結構交互共重合性が高いと言えます。ここで交互共重合の割り合いをA-B, B-Aを足して81.1%というように定義します。
Monte Calro Simulation ver. 2004.9.24
A:Maleic anhydride
B:Styrene
rij (Kii/kij)
1.0 0.035604477
0.43103606 1.0
Image of Polymer
ABABABABABABBABBBABABABBABBAABABABABABABABABBAABA
ABABABABABABABBABABABBBBABABABABBBABABABABBBABABA
ABABABABBBBBBABBABABABBABABABBBBABABBABBABABABABA
BABABABABBBAABABBABABABABABABABABBABABBBABBABABAB
BABBBABABBABABABBABABABABABABABBABBABBABBBAABABAB
BBABABABABABABBABABABABABABBABBABABABBBABABABABBA
ABABBABABBBABABABABBABABABABABABABBABABABABABABBA
ABABABBABBABABABABABABABABBBBABBABABABABABBABABAB
BBABBBABABABABABABBBBABABABABABABBBABABABABABABBA
ABABABABABABABABBABABABABABBABABABABABABABBABABBB
In polymer
A: 41976
B: 58024
Diad
A-A: 1413 A-B: 40563
B-A: 40563 B-B: 17460
例えばmol%'を70,30にしてみてください。
さらに交互共重合性が高まり、88.3%になります。
Monte Calro Simulation ver. 2004.9.24
A:Maleic anhydride
B:Vinyl Acetate
rij (Kii/kij)
1.0 0.26257384
0.17628562 1.0
Image of Polymer
ABABABABABABBABABAAAABABABABABAABBAABABABABAAABAB
BABABABAABABABABBABABABAABABBABBABABBABAAABBABABB
AAABABABAABABABABABBABBABABAABABABAAABAABABAAABAB
BBAABABABAABAABAABAABAABABAABABABAABABAABABABBBAB
BABABAABABAABBABABABABAABABBABABAABABABABABBAABAB
BBABAABABABABAABABABABAABABABABABBABABABAAABABBAB
AAABABABABABABABABABABBBABABABABBBABBAAABABABABAB
ABBABABBABBBABABABABBAAABBABABABABABABABABABAAABA
BABABABABBABBABABAABAABBABABAABABBAABABABABAABAAB
BAABABABBABABABAABABABAABBABBABABBBABABBABABABAAB
In polymer
A: 51621
B: 48379
Diad
A-A: 10557 A-B: 41064
B-A: 41064 B-B: 7314
これも82%ですから無水マレイン酸とスチレン系と同じぐらいの交互共重合性を持つ事がわかります。
-10度で反応させると86%ぐらいまで上がります。
無水マレイン酸のスチレンに対するr1は
実験値:0.1 B3LYP計算値:0.0006 ニューラルネット:0.036
ですので無水マレイン酸ラジカルには10倍以上早くスチレンが反応します。
スチレンの無水マレイン酸に対するr2は
実験値:0.01 B3LYP計算値:0.031 ニューラルネット:0.431
ですので実験値的にはスチレンには100倍早く無水マレイン酸が反応しますがニューラルネットワークでは2倍程度とちょっと精度が出ていません。活性化エネルギーと頻度因子を別々に推算して反応速度定数を計算するので両方の推算誤差が悪く働くとこうなってしまいます。
無水マレイン酸の酢酸ビニルに対するr1は
実験値:0.003 B3LYP計算値:0.019 ニューラルネット:0.263
ですので無水マレイン酸ラジカルには100倍以上早く酢酸ビニルが反応します。
酢酸ビニルの無水マレイン酸に対するr2は
実験値:0.002 B3LYP計算値:0.031 ニューラルネット:0.176
ですのでやはり100倍早く無水マレイン酸が反応します。
それでもMOPACの計算とは違って反応性比が逆転していないので一応交互共重合らしい結果になります。
いろいろな系で試してみて頂きたいと思います。
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