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2012.8.28

グリーンソルベント

2013.8.5 ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使い、Eastman社のグリーンソルベントを用いた溶解設計法を解説したので参考にしてください。

今年(2012)のニュースで印刷関連で働く方に胆管がんが多発しているというニュースは非常にショッキングでした。

印刷というのは”インク”を紙に塗ることですが、その乾いたインクを溶かすのに、ジクロロメタンやジクロロプロパンを使っていたと言います。

除害設備もなく防毒マスク(2011年講義資料)も無しに使っていたということです。

古くはこうした溶媒にはシンナーが使われていました。

シンナーに含まれる有機溶剤(特にトルエン)は中枢神経麻痺作用があり、蒸気を吸引すると酔っ払ったような状態になり、”シンナー遊び”として一時、社会問題化しました。

また、引火性があり、危険物第4類第1石油類として規制されています。

その後、フロン溶媒(CFC:クロロフルオロカーボン)の利用が盛んになりましたが、これは人体には無害ですが、オゾン層を破壊することが明らかになり、1996年特定フロンは全廃されました。
分子中に水素を持つフロンは大気寿命が短い(2011年講義資料)ため、オゾン破壊係数が小さく全廃されるのはまだ先ですが、地球温暖化係数が高いので、規制の前倒しが予定されています。

このオゾンを壊すのは塩素ラジカルです。また塩素含有物質を低い温度で燃焼させるとダイオキシンという猛毒が発生するので、近年塩素含有化合物は高分子も含めて”嫌われ者”になっています。

しかし、分子中に塩素が入ると不燃性(発生する塩素ラジカルが火をクエンチする)になること、溶媒として溶解性バランスが非常に良いこと、フッ素が入っていなければ大気寿命が短く、成層圏のオゾン層まで辿り着かないのでオゾン破壊係数、地球温暖化係数が小さいことから、ドライクリーニングを含め、まだまだ広く利用されています。

ただし、塩素系溶剤と言えども有機溶剤の一部であるので保護具、除害設備など正しい使い方をしなければなりません。

また、可能であるならばグリーンソルベントと呼ばれる人体に無害な溶媒に置き換えて行かなくてはなりません。

その為に化学、化学工学ができることを考えてみましょう。

ある、人体、環境に有害な溶媒を、グリーンソルベントに置き換える際にどのような指標で選択していけばいいでしょうか? 

化合物自体が不燃性であるためには、分子中に塩素、臭素、フッ素といったハロゲン原子を導入するか、燐系などの難燃剤を併用するしかありません。

しかし、そうした化合物は他の問題も引き起こします。

それでは燃えにくくするにはどうしたらいいでしょうか? 
化合物の引火点に関しては2011年の講義を参照してください。
基本的には分子が大きく沸点が高くなれば引火点も高くなります。

しかし、インクなどを考えた場合には、沸点が高くなるということは、乾きにくくなることを意味し、RER(酢酸ブチルを100としたときの相対揮発度、2011年講義資料参照)の観点から余り高い沸点の化合物は使いにくいです。

それでは人体に対する有害性はどうででしょうか?

官能基ごとの有害性をラットの経口急性毒性(LD50)で見てみましょう。

有機溶媒の経口急性毒性(LD50)

1級アルコールを一つ持つ化合物のLD50を炭素数に対してプロットすると下のようなグラフになります。

1級アルコールのLD50データ

PolyPhOH

動物が食べる食物の中に、メチルエステル、エチルエステルは普遍的でしょう。
それが加水分解してできる低分子アルコールは毒性はあまり高くありません。

分子鎖が長くなるに連れ、また毒性は低下(LD50は上昇)しますが、炭素鎖が6ぐらいで毒性が最も高くなります。

これは動物の体を構成する脂質とほぼ等しい極性となるからではないでしょうか? 
logP(オクタノール/水分配比率、logKowとも呼ばれる)はC8のアルコールと水で、ある化合物がどちらにどのくらい分配したかを示す指標です。

生体毒性、生物蓄積性などを考える上での重要な指標になります。
それにオクタノールが選ばれたのは偶然ではなく、このぐらいの極性の化合物が一番体に取り込まれやすい事を示しています。

フェノール性の水酸基は毒にも薬にもなります。
詳しくは2011年講義資料を参照してください。

次にエステル化合物を見てみましょう。

エステル化合物のLD50データ

PolyPhOH

ほとんどのエステル化合物は毒性が低いです。
これは動物が餌として長年摂取してきたことによるのでしょう。

唯一の例外はAllyl acetate(LD50: 130)です。
しかしVinyl Acetate(LD50: 2920)は毒性が高くありません。
いわゆるラジカル重合用のモノマーは不飽和結合とエステルを持つものが多いので、モノマーとしての危険性は高いものの、重合してしまえば、飽和になるので、ポリマーとしては安全です。

ケトン化合物もエステル化合物と同様に毒性は低いです。しかし、不思議なことにアセトン、MEK, MIBKあたりまではよく使われる溶媒ですが、ケトン類としての化合物はあまり多くありません。中性以外の時の安定性が問題なのかもしれません。

ケトン化合物のLD50データ

PolyPhOH

低分子のアセトンは急性毒性が低いです。
分子鎖の長いケトンの毒性データは持ち合わせていません。
どなたかデータをお持ちの方は連絡を頂けるとうれしいです。

カルボン酸化合物もエステル化合物と同様に一般的には毒性が低くなります。

カルボン酸化合物のLD50データ

PolyPhOH

例外は2重結合を持つカルボン酸です。
Acrylic Acid (LD50: 33.5),
Allyl Acetic Acid (LD50: 470)
などが毒性が高くなります。

また、ぜひとも注意しなければならないのが、Isobutylic AcidでLD50が280と非常に毒性が高くなります。
何が原因なのでしょうか?

芳香族のカルボン酸はフェノール性の水酸基と同様、毒にも薬にもなるのでしょう。
Acetyl salicylic Acid (LD50: 200), Saliculic Acid(LD50:400)などがあります。

アルデヒド化合物は、自然界では果物などのニオイ成分として存在しまいます。

アルデヒド化合物のLD50データ

PolyPhOH

他のものと比べ毒性は比較的高くなります。
また、やはり2重結合を持つものは毒性が高くなります。
Acrolein (LD50: 25.9),
Methacrylaldehyde (LD50: 111),
Crotonaldehyde (LD50: 300)
などです。
Formaldehyde(LD50: 800)、
FurFural (LD50: 50)
なども注意が必要です。

アミン類は毒性が皆高いので溶媒には適しません。

アミン類のLD50データ

PolyPhOH

ニトリル類もAcetonitrileを除き皆毒性が高くなります。

ニトリル類のLD50データ

PolyPhOH

エーテル化合物は少し複雑です。

エーテル化合物のLD50データ

PolyPhOH

他の化合物と違い、2重結合があっても毒性は高くありません。
Ethylene Oxcide(LD50: 72)
Propylene Oxide (LD50: 380)
Trioxane (LD50: 800)
と環状の小さなエーテル化合物は毒性が高くなります。
分子が大きな鎖状のエーテルは毒性が小さくなります。

1,2-dimethoxyethane (LD50: 775)
だけは注意が必要です。

こうした急性毒性の結果だけから考えても、許される”グリーンソルベント”は2重結合を持たない、エステル、エーテル、アルコールのみから構成される化合物が候補となることが判ります。

複合官能基化合物のLD50データ

PolyPhOH

分子中にエステルとエーテル(ES-ET)を持つ化合物、エステルとアルコールを持つ化合物(ES-AL)、エーテルとアルコールを持つ化合物(ET-AL)はほとんど皆毒性が低いことが判ります。
例外は、
Butoxyethanol (LD50: 470),
Ethylene Glycol Mono n-Hexyl Ether(LD50: 830)
で、大きな疎水性のアルキル基がつくと良くないことが判ります。

そうした、いわゆるグリコール油は日油(日本油脂)、日本乳化剤、ダイセル化学、ダウ、ローディアなどから販売されています。

それでは、溶媒を”グリーンソルベント”に変更しようとした時に、沸点、引火点、毒性だけから選択できるでしょうか? 

溶媒は何かを溶解するために使うので、溶解度の指標なしには溶媒探索はできません。

課題
ここまでの化合物ごとに分けたデータをひとまとめにして炭素数に対してプロットしてみましょう。炭素数に対して傾向は見えるでしょうか?

ビッグデータ解析というのは、有効そうに見えて、本来見える傾向を隠してしまう事があります。

次に溶解の指標について考えてみましょう。

KB値(K.B.価)

 カウリ・ブタノール値(KB値)は主に塗料・接着剤の分野で使われていましたが、最近ではほとんど使われることが無くなりました。
  この測定方法はASTM D1133に記載されています。
簡単に説明すれば、カウリ樹脂のブタノール溶液を三角フラスコに取り、試験溶媒を加えていき、濁りの出た時の試料のmlで表します。

このカウリとは松と同族の木で、それから出る樹液が固まったものがカウリ樹脂です。
この樹脂がさらに年月がたち化石化すると琥珀と呼ばれます。

このカウリ樹脂はチューインガムの原型であり、また古くにはこの樹脂を溶解したものは接着剤として用いられてきました。

天然樹脂ですから産地、年代によってKB値もばらつきが出るます。
そこで、トルエンの値が100になるように規格化されています。

同じ”松やに”であるロジンが塗料に使われた経緯から、カウリ、ロジンをどのくらい溶解するかが塗料・接着剤の分野で重要であったためKB値という指標につながりました。

CFC(クロロ・フルオロ・カーボン)のうち特にCFC-113は電子基板の洗浄に多用されました。
その分野では、基板にハンダ付けする際に”松やに”入りのハンダを使っていたため、”松やに”を洗浄し、かつ、基板上の電線被覆材を溶かさない溶媒としてCFC-113は非常に優れた溶媒でした。

ドライクリーニングの分野でも、プラスティックを痛めずに油汚れだけを落とすなどの機能が要求されました。
この観点から、クリーニング・洗浄などの分野でもKB値は重要な指標でした。

しかし、現在ではKB値を測定する用のカウリ樹脂の入手が非常に困難でこの値を見ることはほとんど無くなりました。
でも、塗料・接着剤・クリーニング・洗浄の分野では未だに使われている重要な指標です。

このKB値はカウリ樹脂が完全にブタノールに溶解する事から考えても、アルコール、ケトン、エステルなどの極性溶媒では非常に大きな値になり、溶解性を判断する指標にはなりません。

アニリン点(A.P.)

アニリン点はアニリンと石油系溶剤が混合された均一透明溶液を冷却した際に、濁りが生じた温度を言います。

環状や芳香属系の溶剤は脂肪族溶媒よりもアニリンに溶解しやすくアニリン点は低くなります。
この事はKB値と同じように環状、芳香族系溶媒の含有割合を表すものとも言えます。
しかし、KB値は値が大きいほど溶解性が高くなるが、アニリン点は値が大きいほど溶解性が低くなります。

SP値

SP値(Solubility Parameter)は溶解度パラメータ、溶解性パラメータと呼ばれる指標です。
よく使われているのはHildebrandのSP値でしょう。おおもとの研究はHildebrand と Scottによって”The Solubility of Nonelectrolytes (1964)”に発表されました。

PolyPhOH

溶液から分子を一つ取り出して,そこへ他の分子を戻す事を考えた時に,混合の自由エネルギーは

ΔG=ΔH-ΔTS      式(1)

であらわされ,これがゼロかマイナスの時に混合がおきます。
その時のΔHを

ΔH=φ1φ2V(σ1-σ2)2     式(2)
φ:volume ratio,σ:SP value

とした時に,初めて溶解度パラメーター(SP値)の概念が生まれました。

SP値が近いもの同士はΔHが小さく,ΔGがゼロかマイナスになりやすくなります。
そこで,”似たものは似たものを溶かす”という原理が生まれた。

σ={(ΔH-RT)/V}0.5      式(3)
ΔH:蒸発潜熱、R:ガス定数、V:分子体積

一般的には蒸発潜熱から、式(3)を使ってSP値が求められ,様々なデータベース,ハンドブックにその値が記載されています。

先駆的な研究としては,このHildebrandのSP値は非常に優れています。
しかし、蒸発潜熱だけから決定されるため,自ずと限界があります。

つまり,本来,似たものは似たものを溶かすと言った場合,化学構造が似たものは,化学構造が似たものを溶かすのであって,蒸発潜熱が似たものは,蒸発潜熱が似たものを溶かすのではないからです。

Hildebrandの研究が世に出るのとほとんど同時に、それは塗料やラッカー業界に取り上げられました。
そしてユーザーとHildebrand自身も単一のパタメーターだけでは十分な能力を発揮できない事にすぐに気がつきました。

Hildebrandの式に他の項を付け足した多くの異なった式が現れましたが、たいした成果はありませんでした。

しばらくして、Hildebrandのパラメータは分散(dD)と極性項(dP)に分割されました。その式でさえアルコール類が全く合わないため、この分割法も支持されませんでした。

SP値を簡便に入手できるため、日本ではHildebrandのSP値がいまだに広く利用されていますが、日本以外ではSP値を3次元(4次元)に分割したハンセンの溶解度パラメータ(HSP)が主流になっています。

PolyPhOH

このHSPを溶解指標に使うのであれば、化学工学の知識は非常に役に立ちます。詳しくは「ハンセンの溶解度パラメータと化学工学」の記事を参照してください

それでは、実際にジクロロメタンやジクロロプロパンの代替溶媒を考えてみましょう。

ジクロロメタン、KB値=136
ジクロロプロパン、KB値=129(推算値)

シンナーの主成分であるトルエンのKB値は、KB値測定の基準である100であるので、このインクを溶解する溶媒のKB値は100近辺が好ましいことがわかります。

そこで、KB値のデータベース(とは言っても、KB値の解っている溶媒は55溶媒しか持っていませんが)から該当する溶媒を抜き出してみます。

トルエンの類縁体か塩素系の溶媒しか無いことが判ります。
これでは塩素系の溶媒の代替を探すとシンナーに戻るというナンセンスな結果になります。

そこで、上で求めたようなグリコール油のKB値をSP値から推算することを考えます。

PolyPhOH

KB値はブタノールに溶解したカウリ樹脂が析出を始めるまで加えた溶媒の量で表されます。

そこで、アルコールなどを加えても中々析出せず、KB値は非常に大きな値になってしまいます。
そこでこの式を使ってKB値を計算できるのは、グリコール油の末端がエステルやエーテルでキャップされた溶媒のみとなります。

グリーンソルベント・データ

上のテーブルに代表的なグリーンソルベントがありますので、YMBを使ってHansen totHSPをテーブルに付け加えるましょう。

課題

totHSP=0.0475*KB値+13.762

を使って、各溶媒のKB値を計算し、ジクロロメタンやジクロロプロパンに一番近い溶媒を探してみましょう。

このtot HSPというのは、HildebrandのSP値と同じものです。実はこれはもう余り使われていません。

それは、例えばエタノールとニトロエタンは分子のサイズが似ていて、蒸発潜熱も似ているので、HildebrandのSP値はほぼ同じ値になってしまいます。

しかし、エタノールとニトロエタンの基質溶解性が全く異なることは容易に判るでしょう。

PolyPhOH

ハンセンはそのSP値を3次元(現在は4次元)に分割し、それをベクトルと捉え、ベクトルの向きと長さが”似ているものは似ているものを溶解する”と溶解度の理論を拡張しました。

ベクトルの類似度はHSP距離と呼ばれ次式で計算される。

HSP距離=sqrt(4*(dD1-dD2)2 +(dP1-dP2)2 +(dH1-dH2)2 )

dD:分散項(ファンデルワールスのエネルギー項)
dP:分極項(ダイポールモーメント、誘電率に相当するエネルギー項)
dH:水素結合項(水素結合、その他のエネルギー項)

課題

従って、ハンセンのやり方では、ジクロロメタンやジクロロプロパンのHSPベクトルからのHSP距離が近いグリコール油が同等の溶解性を示すと考えられます。

上のテーブルの化合物をYMBを使って計算すれば、計算結果にdD33, dP33, dH33とver. 3.3相当の最新のHSP値が計算されます。

それを使って

ジクロロメタン、[dD, dP, dH]=[17, 7.3, 7.1]
ジクロロプロパン、[dD, dP, dH]=[17.3, 7.1, 2.9]

からのHSP距離を求め、最も近い溶媒はどれか求めてみましょう。

また、HSPを使うと混合溶媒のHSPも簡単に計算できます。

混合溶媒のHSP

[dDm, dPm, dHm]=[(a*dD1+b*dD2), (a*dP1+b*dP2),(a*dH1+b*dH2)]/(a+b)

PolyPhOH

混合比率は体積で計算します。

単独溶媒ではHSP距離が長い時には、混合溶媒で探すことも可能です。

また、HSPを使うと、単に溶解するかどうかだけでなく、ポリマーの固有粘度との関係も得られます。

PolyPhOH

それに関しては、2011年講義資料を参照してください

グリーンソルベントの製造プロセスについては、2012年講義資料を参照してください。

不飽和カルボン酸のエステルも立派なグリーンソルベントです。不飽和カルボン酸についてはこちらの2012年講義資料を参照してください

オクタノール/水分配比率(log P, logKowとも呼ばれる)

オクタノール/水分配係数は、物質の親水性・疎水性を判断する基礎的な数値として用いられ、医薬品の吸収率や生物学的利用能、薬物受容体との疎水的相互作用のモデル化、土壌や地下水中での移動予測などに利用されています。
これについては2011年抽出の講義資料を参照してください。

この値は溶解度の比であることを強く認識する必要があります。
0.01/0.01でも100/100でもlogKowは同じ値になってしまいます。

この値が大きくても溶ける絶対量は10000倍違うことも多々あります。
次のHLBと同じ程度の意味合いしか無いともいえます。

HLB(Hydrophile-Lipophile Balance: 親水親油バランス)

これは溶解の指標ではありませんが、界面活性剤を使って化学品を水に乳化、分散させるときには重要な指標になります。

この概念はグリフィンによって提唱されました。
HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。

HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(グリフィン法)

HLB=7+Σ(親水基の個数)-Σ(親油基の個数) (デイビス法)

グリフィン法が一般的ですが、フッ素のような原子がついた場合、分子量が大きくなるのでHLB値は見かけより小さくなります。
その場合には、分子量の代わりに分子の体積を用いると炭化水素系と同様に扱えます。
(詳しくは界面活性剤の資料を参照してください。)

ライオンや花王などでは非常に多くの界面活性剤を利用した商品を上市しています。

乳化重合など、モノマーを乳化したいなどの場合必要になるので覚えておくと良いでしょう。

自由研究

KB値の所でも触れましたが、塩素系の溶媒とトルエン類縁体はKB値が似通っています。
人体への影響という観点では芳香族は毒にも薬にもなると説明しました。

フェノールは殺菌剤に使うくらいなので好ましくありませんが、ベンジルアルコールはLD50:1230と毒性は高くなく、そのエステル、酢酸ベンジルは、ジャスミン、イランイランの芳香成分としても有名です。

ベンジルアルコールをベースにしたグリコール油を設計し、KB値、HSP距離を求めてみましょう。

このページで紹介した、LD50が非常に小さな値を取る特異的な例外化合物をYMBを使って計算してみましょう。
計算値の中で何か特徴はないか調べてみましょう。

各溶媒の物性値を、日油(日本油脂)、日本乳化剤、ダイセル化学のカタログ値と比較してみましょう。
特に相対揮発度(RER)に注目して、インクの乾きやすさを考察してみましょう。


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