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Last Update

02-Jan-2013

2004.1.17

SETI@homeってご存じだろうか? 世界中の(暇な、失礼!) コンピュータの余力を使わせてもらってエイリアンを探そうというプロジェクトです。参加を表明するとマックの場合、確かスクリーンセーバー型のプログラムをダウンロードして走らせておく。コンピュータを使っていない時にそのスクリーンセーバが起動するとSETI@homeのサーバーからジョブを貰ってきて勝手に解析を始めて解析結果はサーバーに送り返す。コンピュータを使いはじめればスクリーンセーバーなので解析はやめる。解析するデータは電波望遠鏡から得た情報で通常のスーパーコンピュータを使って解析しても何年もかかるような解析を世界中の何十、何百万のパーソナルコンピュータの余力をボランティアに借りて解析してしまう。これはグリッドコンピューティングとかいう技術を使っているらしい事まではわかっているが、解析プログラム等はオープンにはされていない。(エイリアンからの信号をねつ造されては困るかららしい)最近は他にもタンパク質の折り畳みをMD計算するなど様々な@homeが立ち上げっているらしい。

技術自体は日本にもあるらしく、去年のJAVA Pressのどこかに産業技術総合研究所(昔の筑波の電総研)の研究者がグリッドコンピューティングの仕方について投稿されていたと思う。じゃー自分がSETI@homeならぬPolymer@homeをできるかというとそれは話が違う。自分は高分子化学が専門でコンピュータのシステム周りはほとんどできない。だれかやってくれないかなー?

M総研のNさんが適任なのだけどなー。産総研のSさんがグリッドやってくれればなー。

自分は今、暇なコンピュータには非経験的分子軌道計算をやらせている。もともとが高分子化学が専攻だった関係からラジカル重合の遷移状態を計算させている。これは例えば

 

塩化ビニルとアクリル酸メチルの共重合を考えた場合、塩化ビニルラジカルと塩化ビニルモノマーの反応速度定数をK11、アクリル酸メチルとの反応速度定数をK12とし、その比がをr1とする。同様にアクリル酸メチルラジカルの反応速度定数をK21,K22としてr2を得る。もしこのr1,r2を得る事ができれば後はモンテカルロシミュレーション(MC)でどんなポリマーができるかをシミュレーションできる。この反応を非経験的分子軌道計算法を使い遷移状態を計算し原系との差を使ってK11-K22の4つを計算する。例えばUHF/6-31G**で計算すると、r1は0.095と計算される。文献値は0.12であるので良い一致である。r2の計算値は5.90、文献値は4.4であるので、まー、溶媒効果とかがあるとしても十分であると考えられる。自分はこれまでに、塩化ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、塩化ビニリデンの7モノマーについて7*7=49の遷移状態をUHF/6-31G**のレベルで計算を終わらせてある。従ってこのモノマーの組であればどの組でも反応性比が計算できる。

こうした反応性比の(分子軌道計算による)データベースを構築したいのである。

考えてもらえれば分かると思うのだが、モノマーをもう一つ、例えばフッ化ビニルを増やすと、8*8=64,すなわち後15個の遷移状態を計算しなければならない。重要なモノマーが後何個あるのかそれは参加者の思惑によるのだろうけど、モノマーが100あれば1万組の遷移状態を求めなければならない。これは自分の手持ちのコンピュータを総動員しても何十年かかっても不可能だ。これをグリッドコンピュータを使って使用していない間だけ計算資源を借用する方法で実現したい。こんなことに計算機資源を貸そうなんて酔狂な人はいないですかねー? これで反応性比が任意のモノマーの組で求まればどのようなシーケンスのポリマーができるかわかる。シーケンスが分かればガラス転移温度など様々なポリマーの物性がシミュレートできる。

実は今までの計算はUHF/6-31G**でやってきていますがスチレンだけは実験値と全然あわない。芳香族環とビニルの2重結合がUHF/6-31G**では正しく評価できていないのかもしれない。MP2で計算するなら結構おおごとだしなー。地球外生命の探索も夢があるけど、こういうプロジェクトを立ち上げる人はいませんかね? 独立行政法人となって稼げる研究をしなければならない産総研が音頭とってこういう事すればいいのになーと思うのだけど。

もしそんなのが実現したら非経験的分子軌道計算でフリーなプログラムといえばGAMESS。これを使ってGAMESS@homeを立ち上げてくれる人大募集。遷移状態の初期構造? それは賢いニューラルネットワークが与えてくれます。

どうしてそれで稼げるのかって? それはサーバーのテクノロジーとGAMESSのグリッドコンピュータ対応版を用意してGAMESS@homeをアカデミックにやる。これはいい宣伝になる。すると企業が独自のモノマーを企業内の遊んでいるPCで解析できる用のシステムが欲しくなる。これは販売するってやれば稼げるしニーズもたくさんあると思う。