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2012.8.27
最近、韓国のサムスンやLGが年内に55inchの有機ELテレビを売り出す、パナソニックとソニーは連合を組んで巻き返しを図るとニュースで騒がしいようです。
詳しい事は専門家に任せておいて、有機EL材料の溶解性について特許を調べてみましょう。
Googleで”溶解性 イリジウム 有機EL”と検索すると、「良溶解性イリジウム錯体及び有機EL素子」という特許が見つかりました。
(この特許は高砂香料と日本放送協会のものです。何故だか知らないが日本放送協会は、他にも特許を単独出願しています。)
このデータを解析してみましょう。
この特許では、基本的な構造は上にしめすもので変わりません。
イリジウムの周りにはピリジン性の窒素が2つ、ケトン酸素が2つです。YMB12Eを使って、分子を描き、propertiesボタンを押しますと
各原子上の電荷は計算されますが、物性値は計算されません。
それは中心のIrの物性推算用パラメータが無いため計算できないからです。(電荷計算は全ての原子で計算できます。)そこで中心部分は全て同じなので、周りの配位子だけを計算する事にします。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
もしHTML5対応のブラウザーをお使いなら、上にキャンバスが現れるでしょう。 溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れます。
どの溶媒がどの領域を溶解しているかを、溶媒をクリックしながら確認してください。
1-1
1-2
1-3
1-4
ここまでは、ジケトンの側が修飾されています。従って、
と
ジケトンを構造を変えながら4種類計算すれば良い事がわかります。
そして、
1-5
1-6
では、芳香族の方に修飾基をつけて計算すれば良い事がわかります。
芳香属骨格4種類、ジケントン骨格5種類をYMBを使って計算しておきます。
配位子データ
得られている物性値は例えば、トルエンに対する溶解度です。
1-4から1-5の化合物は溶解度が特に大きくなります。
基本骨格のYやジケトンにアルキル鎖がついたものは溶解度がたいして大きくなりません。
つまりフェニルーピリジンのフェニル側に置換基をつけると溶解度は非常に高くなる事がわかります。
ジケトンの側はケトンを一つエステルにすると溶解度が大きくなることが構造式を見るだけでわかります。
YMBでは様々な物性値を推算しますが、ここでは溶解度を扱うためにハンセンの溶解度パラメータの計算結果だけを抜き出してみましょう。
(それは、ハンセンの溶解度パラメータは混合則がはっきりしているからです。他の物性値は混合則が明らかでないものが多いです。)
YMBの計算結果を使って、以下のテーブルを埋めておきましょう。
配位子 | Mol Volume33 | Hansen dD33 | Hansen dP33 | Hansen dH33 | Hansen dHdo33 | Hansen dHac33 |
Ph-Pyr | ||||||
Ph-PydC6 | ||||||
Ph-PydC10 | ||||||
Ph-PydC5 | ||||||
AAC9-1 | ||||||
AAC9-2 | ||||||
AAC12 | ||||||
AAOC12 | ||||||
AA |
ハンセンの溶解度パラメータでは、複数の溶媒の混合溶解度パラメータは体積分率で計算されます。
各イリジウム錯体の混合HSPを計算してみましょう。
例として1つ目は計算してあります。
同じ結果になるか確認してから残りのものを計算しましょう。
Mix | Mol Volume33 | Hansen dD33 | Hansen dP33 | Hansen dH33 | Hansen dHdo33 | Hansen dHac33 | |
N1-1 | 2*(Ph-Pyr)+AAC9-1 | 524.74 | 18.10 | 5.11 | 4.07 | 0.00 | 4.07 |
N1-2 | 2*(Ph-Pyr)+AAC9-2 | ||||||
N1-3 | 2*(Ph-Pyr)+AAC12 | ||||||
N1-4 | 2*(Ph-Pyr)+AAOC12 | ||||||
N1-5 | 2*(Ph-PydC10)+AA | ||||||
N1-6 | 2*(Ph-PydC6)+AA | ||||||
Y | 2*(Ph-Pyr)+AA |
このHSPと実溶解度の関係をQSPR式で表してみましょう。
QSPR式=A*dD -B*dP -C*dH+D*Volume -E A-Eまでの係数は重回帰法を用いて自分で求めてみましょう。
dDは溶解度を大きくし、dPとdHは溶解度を下げる方向である事が分かります。
トルエンの溶解度パラメータはdPやdHが小さく、似たものは似たものを溶かすという原理で考えると、dPとdHは小さいものの方が好ましいことがわかります。
ITOの上にPEDT:ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、PSS:ポリスルホスチレンをスピンコートした上に、こうして合成されたイリジウム錯体(ホスト材料)と2-1に示すゲスト材料と電子輸送材料とを47:6:47の質量比で混合したものを1,2-ジクロロエタンに溶解してスピンコートします。
トルエンのハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は[18, 1.4, 2]で1,2-ジクロロエタンのHSPは[18, 7.4, 4.1]です。
1,2-ジクロロエタンのdP, dHはトルエンに比べると大きいです。
これは、電子輸送材料(OXD-7)
の極性が高く、3者を溶解するにはトルエンでは不適切なためではないでしょうか。
OXD-7の構造を描いてHSPを計算してみましょう。
他の特許を見ると、発光体が低分子の場合は蒸着法、高分子の場合は塗布法が用いられるとあります。
蒸着法は大型ディスプレーには適しません。
膜厚のコントロールが難しく、原料の無駄が多いからだそうです。
塗布法ではインクジェット(2012年講義資料)が使われますが、大面積に均一に塗布するには改善が必要とされています。
こうした、インクを作って塗布するという観点から、印刷関係の会社からの特許も非常に多いです。
大日本印刷、凸版印刷、セイコーエプソン、キャノンなどです。
インクジェットの利用にはインクの粘度に関する知見が欠かせません。
2011年講義資料のポリマーの固有粘度の説明はよく理解しておいてください。
こうした発光材料の問題点はその寿命です。
酸素や水には弱いからです。
酸素を遮断するにはどんなポリマーが良いか?は2011年講義資料の高分子を参照してください。
1,2-ジクロロエタンは経口LD50ラットが670と小さく、毒性の高い溶媒です。
2011年講義資料のシックハウス原因物質のページを参照にして、他の溶媒に置き換えることを考えなくてはならないかもしれません。
こうしたイリジウム錯体を合成するのは、次の反応式に従います。
できあがた粗液には原料や副生成物が混じっているので、精製しなくてはなりません。
これは化学工学が最も得意とする分野です。
特許ではシリカゲルカラムで精製し、さらにヘキサン/ジクロロメタンから再結晶し、さらに昇華精製するとあります。
カラム精製に関しては2011年講義資料の抽出を参考にしてください。
再結晶操作に関しては2011年講義資料でイブプロフェンの再結晶で説明しました。
ジクロロメタンを何故使っているのでしょうか?
2012年講義資料、グリーンソルベントを参照にしてください。
化学工学のとしては、分離操作(溶解、抽出、再結晶)、物性値としては溶解度、粘度、表面張力が重要になります。
液晶
液晶につては、別ベージに移動 全面的に改定 2014.7.17
CNT薄膜トランジスタ
東レの、半導体ポリマーと単層カーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube :以下「CNT」)を複合化することにより、世界最高レベルの性能を示す塗布型CNT薄膜トランジスタ(CNT-Thin Film Transistor :以下「CNT-TFT」)の開発に成功という記事が出ていました。
電子ペーパー等ディスプレイ用途での採用を目指しているらしいです。
インクジェットなどの塗布方法(2012年講義資料)で均一な単層CNT分散薄膜を形成できるようになり、高いTFT特性が可能となったそうです。
カーボン材料については2011年講義資料、Pirkaのハンセン溶解度パラメータの資料を参考にしてください。
CNTのイオン液体とのゲル体は2012年講義資料を参照してください。
半導体ポリマーについては、Pirikaの硫黄系のポリマーの資料を参考にしてください。
この、東レの特許を調べてみましょう。
JP 2010-18696がわかりやすいでしょう。
クレーム
「カーボンナノチューブ分散溶液、有機半導体コンポジット溶液、有機半導体薄膜ならびに有機電界効果型トランジスタ」表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブおよび一種類以上の溶媒を含有するカーボンナノチューブ分散溶液であって、 該カーボンナノチューブ分散溶液に含まれる各溶媒の双極子モーメントが3.5Debye以下であり、かつ、 沸点が150°C以上である溶媒を全溶媒中50体積%以上含有するカーボンナノチューブ分散溶液。」
「チオフェン系重合体は、CNTとチオフェンの相互作用を阻害しにくい短い側鎖構造を有していることが好ましく、CNTを溶媒中により長期間安定に分散させることができることから、上記一般式で表されるチオフェン系重合体が特に好ましい。」
実施例はこのようになります。
各溶媒をYMBを使って計算してみましょう。
(THN:テトラヒドロナフタレン、o-DCB:オルトジクロロベンゼンのKB値を2012年講義資料のグーンソルベントを参照に考えてみましょう)
混合溶媒の場合には体積分率から溶媒のHSPを計算してみましょう。
CNT、硫黄系のポリマーのHSPと溶媒のHSPを比べてみましょう。
特許では溶媒の双極子モーメントを問題にしていますが、ハンセンの溶解度パラメータは分極項(dP)がダイポールモーメントから誘起される分子間力となります。
dPで比較してみましょう。
ダイポールモーメントについてはPirikaのこちらの資料を参照のこと。
東レの特許(JP 2008-120999)ではさらに
末端にピレン骨格をつけたものもクレームされています。
Pirikaのこちらのページで、ピレンとCNTの溶解性について確認しましょう。
E-Ink
E-Inkは別ページに移動しました (2014.7.21)
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